―― なるほど、「探っている」に近いのでしょうか? 全貌は見えないけれどすでにその人物や事件は存在していて、掘り下げながらその輪郭を掴んでいく。
岡本 そうかもしれません。自ら生み出したキャラクターなのに、実在の人物を紐解いていくようにおっしゃる。そんな作家さんは初めてでしたね。
―― 打ち合わせそのものが推理劇のようですね。「今」の地点から過去に思いを巡らせることで、謎が徐々に解き明かされていくスリルと臨場感があって。
森脇 それに関連して、ひとついいですか? 僕、『MAO』がスタートする前に物語の軸となる事件のあらましをエクセルで年表にまとめたんですよ。
岡本 私も作りました。時系列が複雑なので、誰がどこで何をやったかを分単位で整理して。
森脇 だよね、作るよね(笑)。先生は「ありがとうございます」と受け取ってくださったけれど、おそらくそんなに役立たなかったんじゃないかな。というのも、やっぱり先生は週刊連載作家だけあって「ライブ感」を楽しんでいるんですよ。「私自身がドキドキしないと筆が進まない」とおっしゃっていて、正確な年表は頭の中にあるけれども、ガチガチに捕らわれずに「こうだったらより面白い!」というアイディアがあれば、どんどんぶつけて壊して新たな形に変えていく。それから辻褄合わせをしていくんです。「生の感覚」をとにかく大事にされているんだなと、近くで見ていてひしひしと感じましたね。
「先生は休む気なんて毛頭なかった」
―― 最後に、るーみっくわーるどの代表的キャラクターである電撃鬼娘・ラムちゃんと『週刊少年サンデー』に引っかけて、「高橋先生にシビれたエピソード」を教えてください。
有藤 やっぱりバイタリティが凄まじいですよね。私が担当していた時は『うる星』に加えて、『めぞん一刻』を隔週で同時連載中だったんです。単純に計算して、月に6本の漫画を描かれていた。
―― あんなにキャラがギュッとひしめく賑やかな作品を、そんなハイペースで。
2024.05.05(日)
文=「週刊文春」編集部