―― それは確かに忘れられませんね……! 先ほどのお話にもあったように、高橋先生は担当の方とみっちり打ち合わせをされるのですね。

有藤 とくに読み切りは1本丸ごと、ゼロから作るのでかなり時間がかかります。『うる星』も一部のエピソードを除いてほぼ読み切りですからね。

 私が担当した頃にはもうメインキャラクターが出揃っていたので、「今回は誰を描きますか?」という話から始まって、例えば「ランちゃんがやって来て」とか「テンちゃんがこんなアイテムを持ってきて」とか、「前回はドタバタ話だったから今回はちょっとしっとりいきますか」とか、そんなアイディアからストーリーを練り上げていきました。

 毎週かなり綿密な打ち合わせを重ねて、頭から結末までかっちり固めるんですよ。ドタバタ劇とはいえ「オチはなりゆきで適当に考えます」なんてことは絶対にないので。

 

『MAO』の連載前、高橋留美子が“一気読み”した作品

―― 打ち合わせは最長でどれくらいに及んだのでしょう?

有藤 『うる星』ではないのですけれども、『忘れて眠れ』だったか『人魚は笑わない』だったか、増刊号の読み切り制作は丸々一晩かかりましたねえ。高橋先生とずっと向かい合わせに座って、雑談も挟みつつ……。トータルで14時間くらいだったかな。

 我々は二人とも沈黙が苦手ではなかったのでお互い「うーん……」と思索にふけったり、先生に夜食を作っていただいたり(笑)。私は続きものを担当したことがないので、『犬夜叉』や『MAO』がどうやって作り上げられているのか興味がありますね。

―― 森脇さんは『MAO』で続きもの、『境界のRINNE』では『うる星』と同じく読み切り型、と両パターンを経験されています。

森脇 やっぱり続きものの方が進みは早かったですね。一話完結はすごく大変で。有藤と同じように「今回はどのキャラをメインで出しますか?」「こんな怪異を入口にしたら面白くないですか?」とネタを出しながら、徐々に形作っていきました。

2024.05.05(日)
文=「週刊文春」編集部