森脇 収録するイラストや原稿を見ていただきながらインタビューしたんです。高橋先生ご本人が思い出深いコマを各作品からセレクトした「私が選ぶ! 語る! このコマが好き」のコーナーも、色々な気づきがあるのではないかと思います。
―― おっしゃるとおりで、コマ運びや台詞にどれだけ苦労したかを明かしていらっしゃって発見の連続でした。シリアスなシーンはもちろん、読者からすると数秒も立ち止まらず「アハハ」と笑って読んでいたあのギャグにも、こんなにも長く深い苦慮と熟考があったのかと……。裏を返せば、それだけ考え抜かれているがゆえにサクサクと楽しく読めるのですね。
有藤 あのコーナーは私がインタビューしたんです。最初はもうちょっとアバウトな企画で「先生にとって印象的なシーン」だったんですけど、その切り口でやってもあんまり面白くないかもと思いまして。どんどん細かくなり、最終的に「一コマを語る」に行き着きました(笑)。
―― ピンポイントな視点だからこそ新鮮で興味深かったです。高橋先生が大変な細部まで制作時のエピソードを覚えていらっしゃるのがまた衝撃でした。『うる星』にいたっては40年以上前の作品ですが、描かれたときの気持ちが鮮明に残っていらっしゃるんですね。
岡本 先生の記憶力には驚かされます。「歴代の担当編集者のことも、どんな人柄や仕事のやり方だったか覚えています」とおっしゃっていました(笑)。
〈『高橋留美子原画集』編集者3名が選んだ“私のベストカット”。「この音無響子さん、“約30年ぶりに公開”された幻の一枚なんです」〉へ続く
2024.05.03(金)
文=「週刊文春」編集部