有藤 その後『ビッグコミックオリジナル』編集部に異動になりまして、そちらでも『Pの悲劇』などの読み切りを4~5本描いていただきました。今でいう「高橋留美子劇場」シリーズですね。それから2014年の『鏡が来た』。高橋先生が『ビッグコミックスペリオール』で初めて描いてくださった、思い出深い一作です。
森脇 僕と高橋先生のお付き合いは『境界のRINNE』からです。4代目編集者として2017年に最終回を迎えるまで担当しました。それから読み切り『千年の無心』を経て、新連載の『MAO』を先生と一緒に立ち上げたんです。トータル5年間担当を務めて、岡本に『MAO』を引き継ぎました。
岡本 はい、『MAO』の10巻くらいから担当しています。
森脇 岡本は『犬夜叉』がきっかけで漫画編集者を志したんですよ。
岡本 小学生の頃アメリカの田舎町に住んでいたんですけど、級友に「日本人って虫食べるの?」「裸で過ごすの?」なんて言われて。どんなに反論しても聞く耳を持ってくれなかった彼女が、『犬夜叉』にハマった途端「絶対に日本に移住する!」と言い出したんです。
面白い漫画は、人種の壁も国境も越えて心を動かすんだと衝撃を受けました。私も『犬夜叉』に並ぶくらい、圧倒的な力を持った世界を夢中にさせる作品に携わりたいと思ったんです。
「とにかく“生感”にこだわりました」
―― 原画集には、皆さんの「るーみっく愛」と「漫画愛」が結実しているように感じます。そもそも原画集を企画されたきっかけは何だったのでしょうか?
森脇 『週刊少年サンデー』が創刊65周年を迎えるにあたり、雑誌を象徴する作家である高橋先生の記念碑的な本を出せないかなと。そこで、今までにない高精細な原画集をつくる企画が始動しました。
―― 本画集には、『サンデー』連載作品である『うる星やつら』『らんま1/2』『犬夜叉』『境界のRINNE』『MAO』に加えて、『ビッグコミックスピリッツ』に掲載された『めぞん一刻』の原画が400ページにわたって収録されています。とはいえ画業64年のうちに描かれた作品は数千点にのぼるはず。どのようにセレクトされたのでしょうか?
2024.05.03(金)
文=「週刊文春」編集部