森脇 編集部で候補をある程度ピックアップして、高橋先生にご意見を伺いました。イラストだけではなく漫画の原稿も収録していまして、こちらも「この回はどうでしょうか?」とリストにまとめてご自宅まで持って行きました。「るーみっくファンの皆さんが一番喜ぶ話ってどれだろう」とかなり密に議論を交わし、先生にOKをいただいた渾身のセレクションです。
―― 懐かしの「写植」が貼られた原稿もありますね。
森脇 『犬夜叉』の初期あたりまでは、フキダシにひとつひとつ切り貼りしていたんです。そのアナログな工程がわかるよう高精細に印刷していますので、クラシックなファンの方もきっと楽しんでいただけるかなと思います。
有藤 『うる星やつら』や『めぞん一刻』、『らんま1/2』は、今は無き2色刷りの原稿も収録しています。「あの時代のサンデー」の、懐かしい手触りを思い出していただけるのではないでしょうか。
森脇 “生感”にはかなりこだわりましたよね。高橋先生の手書きの文字やホワイトで修正した跡もあえてそのまま残しています。ベタ(黒く塗った部分)もコミックスでは真っ黒に整えられていますけど、この本では原画ならではの濃淡を味わえる。先生の筆致をより堪能できるんです。それぞれの時代の息吹をぜひ感じていただけたらと思います。
一コマに滲む、壮絶な努力と記憶力
岡本 表紙も「ファン向け」に相当ブラッシュアップを重ねましたよね。「本当にこの方向性でいいのか?」と何度も案を練って。
―― 当初発表されたデザインから大きく変わりましたものね。収録作品のメインカップルが賑やかに勢ぞろいしていて、『らんま』ファンの友人も(早乙女)乱馬と(天道)あかねちゃんのツーショットにすごく喜んでいました。
森脇 ああ、よかったです。表紙はオーロラ加工でめちゃくちゃピカピカするので、本棚に置くと気持ちがアガりますよ(笑)。
―― イラストの合間や原稿の柱に高橋先生のコメントがちりばめられているのも印象的でした。漫画家としての背骨が感じられる名言ばかりですね。
2024.05.03(金)
文=「週刊文春」編集部