薬がダメなら、外科治療がある

 女性の場合、男性には無い花粉症の悩みがあります。

「妊娠中はホルモンバランスが変わるため、花粉症ではない人にも症状が出たり、すでになっている人が例年より悪化するケースが多いのです。しかし、出来ることなら余計な薬は使用しないほうがいい。妊娠の時期や体質にもよりますので、自分が花粉症だと分っている人、鼻の調子がおかしいと思った人は、産婦人科の先生に使用してもいい薬のリストをつくってもらい、それをもって病院へ行くといいでしょう」

 花粉が飛散する前に外科的な治療でフォローする方法があります。近年、急速に普及しているレーザー治療もその一つ。妊娠中は施術しませんが、花粉症の時期にお薬がないと症状が強く出てしまうような方には妊娠前に行うことが多くなってきました。

「鼻粘膜をレーザーで軽く焼くことで、粘膜上のアレルギー反応を鈍くするというものです。当院では炭酸ガスレーザーを使用しています。手術費用は約1万円(保険で3割負担の場合。他に術前検査等別途)。痛みがほとんどなく、ガーゼを30分ほど入れて手術は10分弱で終了するため、お昼休みや仕事の後に来院される方も多いです」

 ただし、これまでの炭酸ガスレーザーは、鼻水が出ていると粘膜までレーザーが届かないため、症状が顕著になる前に治療をうける必要がありました。ところが、昨年12月に認可された最新式の半導体レーザーによって、この障害が取り除かれたのです。

「半導体レーザーは、少々の鼻水があっても、レーザーが通過して患部に届きます。粘膜の焼き加減も従来のウェルダンの状態に焼いたレーザーよりマイルドで、ミディアムレアの状態に焼くといわれています」

 半導体レーザーのマシンは大場先生のクリニックを含め、まだ日本に数台しかないとか。でも、「すでに鼻水が出てきたけれど、薬は飲みたくない」という方には、選択肢の一つになるでしょう。

 さらに6月には舌禍免疫療法の「シダトレン」という薬が保険適用になると報じられています。

「舌下とは、舌の下(裏)のことです。舌下免疫療法とは、アレルゲンエキスを舌下に投与する新しいアレルゲン免疫療法です。まず、舌下にアレルギーの原因となるアレルゲン(抗原)を低濃度から投与し始め、それを徐々に増量していき、最高の濃度まで増やします。そして、毎日投与することでアレルゲンに対する過敏性を減少させます」

 眠気など従来の薬の副作用に困っていた人にとっては、新しい療法ということで期待が膨らみますが、全国どこの耳鼻科でも処方できるわけではなく、医師が講習とeラーニングなどを経て認定医として登録される必要があるとか。大場先生のクリニックでも現在、その準備が進んでいるとのことです。

お話をうかがったのは……大場俊彦先生 (慶友銀座クリニック院長)
医学博士。慶応義塾大学病院、国立小児病院、東京都済生会中央病院などを経て、2005年に開業。20~30代の働く女性の患者が多く、仕事やライフスタイルに合わせた医療を提供している。得意分野はアレルギー治療といびき治療。二児の父親。
URL http://www.ginzaclinic.com/index.html

2014.02.28(金)
文=中津川詔子
写真=Syda Productions / Shutterstock.com