不祥事をなあなあで済まそうとする日本
韓国で不祥事を起こし、母国で芸能活動を続けられなくなった韓流スターが、日本で芸能活動を再開するケースが相次いでいる。
韓国では許されないのに、なぜ日本では許されるのか? 韓国の元ファンの間では、アイドルたちの罪悪を“水に流す”かのような日本のファンに批判が広がっているという。
それを見て感じるのは、芸能界にせよ、政界にせよ、過去の悪しき出来事にそれなりの“けじめ”をつける韓国社会の姿。日本とはだいぶ様相が異なるようだ。
日本は性加害に“寛容”すぎるのではないか?
私が取材した事件ではこんなことがあった。男が内縁の妻の小学生だった娘に長らく性的虐待を繰り返していた。自宅が火事になりその娘が亡くなった。娘の遺体から被害をつかんだ警察は、その事実を突きつけながら男にありもしない「放火殺人」を自白させた。
結局は裁判のやり直しで無罪になるのだが、その無罪判決でも娘への性虐待は事実だと指摘されている。
にもかかわらず「過去のこと」として触れたがらない支援者が男の周囲に多い。時効の関係で今さら罪には問えないが、犯した罪は罪として受け止めるべきではないだろうか?
日本は不祥事について何となく「なあなあ」で済ませ、なかったことにしてしまう空気があるように思う。それはここ数年の取材でずっと感じていることだ。
時の首相の妻が名誉校長を務める小学校の用地として、財務省が国有地を格安売却した。その経緯を記した公文書を改ざんして「なかったこと」にした。
これほどの大不祥事なのに、公務員も政治家も誰も刑事責任を問われない。それでいいの?
スーパーアイドルや元大統領の不祥事にとまどいながらも向き合う韓国の社会を見るにつけ、思うのは「日本人、これでいいのか⁉」
そんな思いを噛みしめながらご覧いただきたい。ちなみに東京での公開初日、3月30日は全回満席で、観客はほぼ女性だった。だがこの映画、むしろ男性必見だろう。
2024.04.19(金)
文=相澤冬樹