アメリカの影響をいちばん色濃く受けた作品

 ——「黙示録だ」という話がありましたが、アメリカのメディアの評価が耳に入ることもあったかと思いますが、「ここは核心を突いている」と鈴木さんが思うようなものがあったか。

 鈴木 あんまり見ないようにしているんですよね。だから、アメリカでどう言われているのか、そして日本でどう言われているのか、両方とも知りません(笑)。ただ、僕自身はね、彼(宮﨑監督)のそばにいて、彼が何をやろうとしているのか、それはさっきも話しましたけれど、なんとなくわかるんですよね。それを僕が言葉で伝える、っていうのは僕の仕事だと思っていますから。(黙示録だと)そう言ったまでです。これで答えになるんでしょうか。はい(笑)。

 ——アメリカでの興行成績が実際に良いわけですが、メッセージとして伝わっているんじゃないかというふうに受け止めた?

 鈴木 まあ、僕らの若い頃、僕らの若い頃っていうのは1960年代なんですけれど、アメリカで聖書を元にした大作映画っていうのがいっぱい作られたんですよね。例えば、「十戒」とか「ベン・ハー」とか「偉大な生涯の物語」とか「天地創造」とか超大作って、全部聖書が元なんですよ。それで言うと、宮﨑駿なんかも、歳が違うといっても似たような時代を送ってきましたからね、そういうことの影響はあるんじゃないかと。

 それでまあ、宮さんっていう人は、本来いろんなところでそれを公言してましたけれどもね、「アメリカが好きか」って言われたら「好きとは思えない」。「なんでか?」っていったら「戦争で日本をやっつけた国だ」とかね(笑)。ま、そんなこともあったんですけれど。一方で、「じゃあ、日本は?」って言ったら、「負けちゃったから好きになれません」と。そうすると、ヨーロッパっていうことをね、常々(宮﨑監督は)口にしていたと思うんですけれども、彼の作るもの、それから自分が見てきたもの(を振り返ると)、なんかね、アメリカの影響が大きいなぁって、ずっと思ってたんですよね。そういうことで言うと、今回の「君たちはどう生きるか」は、いちばんアメリカの影響を色濃く受けた作品かなって。僕は思っています。

2024.04.12(金)
文=「文藝春秋」編集部