12月には、さらに3頭の赤ちゃんが!
昨年12月4日に、ミンピはさらに3頭の赤ちゃんを出産しました。
「前回を踏まえて、もう一度、同じやり方で発情を促したところ、妊娠したことがわかりました。飼育担当者も二度目のことなので、準備に焦りはなかったはずです。ただ、今回も人工哺育になったらどうするのか。飼育担当者の負担などの懸念はありましたが、生まれてすぐ授乳がうまくいき、子どもたちも静かに寝ていると聞いたときは、私も安心しました」
子どもたちは現在、バックヤードですくすくと成長中。ミルクだけではなく肉もすでに食べるようになっているそうです。4頭の父・ブラン、母・ミンピともに野生の生息地であるインドネシアの言葉から名前をもらっていることにちなんで、3頭もインドネシア語の名前が付けられました。オスの2頭は太陽を意味する「アロナ」と永遠を意味する「アバディ」、メスのは繁栄を意味する「マクムル」です。
スマトラトラはその名の通り、インドネシアのスマトラ島を生息域とするネコ科の動物。野生での生息数は300~500頭ほどとされている絶滅危惧種で、インドネシアでは保護活動も行われています。また、動物園では国際的な繁殖プログラムによって、世界中のスマトラトラを管理しているそうです。
「トラは単独で生活する動物。1頭ずつ分けて飼育しないといけないため、動物園で飼育できる数は限られます。だからこそ、計画的に個体を増やしていかなければなりません。
また、血統の管理も必要になるので、日本国内のスマトラトラを管理している担当者が調整しながら繁殖を行っています。ブランとミンピの相性は非常にいいですが、同じ血統が増えすぎるのはよくないことなので、ペアリングを変えるという選択肢も今後はあるかもしれません」
上野動物園で見られるネコ科の動物は、このスマトラトラとマヌルネコの2種。砂漠地帯や岩山、湿地帯を生息地としているマヌルネコの展示場には、ゴツゴツとした岩場が作られています。
昼過ぎにはすやすやと眠っていた夜行性のマヌルネコですが、一度目を覚ますと活動的に。木を渡ったり、爪を研いだり、岩場に足をかけたりする愛くるしい姿に、来園者は釘付けになっていました。
2024.03.17(日)
文=高本亜紀
写真=松本輝一