この記事の連載

 『ゴールデンカムイ』の人気で、アイヌの文化や伝統への関心は高まっています。でも、アイヌの人々が抱える差別や生きづらさについて、思いを巡らせられている人はどれだけいるでしょうか。

 アイヌへの差別の構造について考えることは、女性やLGBTQ+、障がい者など他のマイノリティ差別の理解にも繋がります。『ゴールデンカムイ』の監修にも参加している、北海道大学教授・北原モコットゥナㇱさんにアイヌの人々がどんなことに「もやもや」を感じているのか、そして無知・無理解の構造、マイノリティとマジョリティの関係性などを伺いました。

後篇を見る


『ゴールデンカムイ』でアイヌに興味を持ったなら
差別や偏見にさらされてきた歴史も知ってほしい

ーー北原先生は漫画『ゴールデンカムイ』の監修をされています。どのような経緯で引き受けたのでしょうか。

 『ゴールデンカムイ』はもともとアイヌ語監修として千葉大学の中川裕先生が入っています。中川先生とのご縁で私は編集部の方と会い、その際に文化研究の立場から気になる部分をお伝えしたんです。連載はすでに掲載されているものの、作者の意向もありコミックスでは修正を反映したいと連絡をいただき、そこから情報提供をする形で協力をしていました。

 驚いたのは、きちんと資料に基づいて描かれていても、その資料の記述の方が間違っていた、ということが多々あったことです。これは我々研究者の責任でもあるのですが、その誤りに気づけたことで論文を書いたりしたので、こちらも学びの多い作品となりました。

ーー『ゴールデンカムイ』でアイヌについて興味を持たれた方も多いと思いますが、北原先生は作品はどう見られましたか?

 面白い作品であることには変わりないのですが、100か0では評価できないと思っています。BLに対するゲイ当事者の評価に賛否があるのと同じような気持ちかもしれません。BLブームによってゲイの恋愛を好意的に受け止めるようになった人も増え、さらにハッピーエンドな作品の増加により明るい見通しを持てるようになった当事者もいる一方で、リアリティと乖離してファンタジーとして描かれた作品に憤っている当事者もいる。

『ゴールデンカムイ』については、やはり影響力は相当ありました。作品に興味を持って私の授業を取りにくる学生も増えましたから。入り口として、アイヌへのイメージもかなりいいものに展開したと思います。一方でファンタジーなので、差別についてはほとんど描かれていないという批判もあり、その通りだと思います。

ーー北原さんの著書『アイヌもやもや』ではアイヌ文化を伝えるのではなく、アイヌ“問題”として語られる差別などに対するもやもやに焦点を当てています。どのような思いが出発点にあったのでしょうか。

 やっと、小・中学校の教科書の中でアイヌについての記載が増えてきたと実感しています。しかし、それは主に伝統や文化についてなんですよね。

 次はしっかりアイヌの近現代史、つまり差別や偏見にさらされてきた歴史についても語られなければいけないと思っていました。そんなときに、フェミニズムやセクシュアルマイノリティ、在日コリアンについての研究がとても参考になりました。

2024.01.24(水)
文=綿貫大介