この記事の連載

 『巻き込む力がヒットを作る “想い”で動かす仕事術』(KADOKAWA)を著したフジテレビ・プロデューサーの村瀬 健さん。この本の中で、村瀬さんは実際の仕事の進め方をつまびらかにし、企画書まで掲載して仕事の手の内を“ぶっちゃけ”ています。その背景にある、テレビドラマ界への思いを伺いました。

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今、地上波のドラマがまた面白くなっている

――『巻き込む力がヒットを作る』を書かれて、改めて気づいたことはありますか?

 本を書く作業は、自分の人生の答え合わせのようなところがありました。自分がこれまでプロデューサーとしてやってきた方法を書き連ねていった結果、「僕ってこういう人だったんだ」というのがわかってきて、自分を総括できた。一方で、ここに書いたことは、僕が常日頃思っていることそのままでもあるんですよね。普段考えてきたこと、その時どきに話してきたこと。だから、親しい人や直属の部下には「読まなくていいよ、ふだん話してることだから」と伝えています(笑)。

――企画の作り方、進め方が具体的に書かれていますが、この本を通じてドラマ界全体が盛り上がってほしいという思いも?

 もちろんあります。この本の中でいちばん気持ちを込めて書いたのは、「僕がフジテレビに留まる理由」という項目です。最近、地上波からNetflixやAmazonに行く作り手が増えている。寂しいけど、そういう決断をした仲間を応援しています。でも、僕は地上波ドラマにはまだまだやれることがあると思うし、『silent』でそれを証明したとも思っているんですよ。僕に限らず、たとえばTBSの飯田(和孝)さんも、『VIVANT』で「やっぱりテレビドラマって面白いでしょ?」と世の中に知らしめてくれたと思うんですよね。

――たしかに大きな話題を集めるドラマは、いまも生まれ続けています。

 これまでも何度も黒船は来ていたんですよ。韓流ドラマブームだとか、『24 -TWENTY FOUR-』にはじまった海外ドラマブームだとか。いま外資系の動画配信プラットフォームが注目を集めているのもそのひとつでしかないと思っていますし、そこに打ち勝つためにみんなが知恵を絞り始めているから、地上波のテレビドラマはまた面白くなってきていると思います。

2023.12.21(木)
文=釣木文恵
写真=深野未季