“白いダイヤモンド”と呼ばれ珍重される「白トリュフ」ですが、単に希少価値をありがたがる食材ではありません。旬の終盤を迎えたいま、これまで日本ではほとんど語られてこなかった白トリュフについて、日本人唯一のピエモンテ州公認白トリュフハンターでありトリュフ商の富松恒臣さんに取材。その魅力を探ります。

「アルバ産白トリュフ」はアルバ産ではない?

 黒トリュフはある程度、人工栽培に成功していますが、白トリュフの栽培法は解明されていません。そのため森の地中30センチ~1メートルの場所に育つ天然ものを“掘り当てる”しかなく、希少で高価(黒トリュフの約3倍)なことから“白いタイヤモンド”と呼ばれています。

 富松さんによると「主な産地はイタリアで、最高級とされるのが、ピエモンテ州アルバ近郊で採れたもの。ほかに、マルケ州のアックアラーニャ、トスカーナ州のサン・ミニアートも有名な産地です。イタリア以外では、クロアチアのイストゥリア、スロベニア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、セルヴィアでも収穫されています」とのこと。

 ちなみに、日本でもよく耳にする「アルバ産白トリュフ」、じつはアルバ産ではありません。「アルバには白トリュフが採れるような森はありませんから。採れるのは、アルバから車で40~50分ほどの山や森の中です」。

 アルバは、近郊の山々で採れた白トリュフが集まってくる、マーケットが立つ場所なのだそう。毎年10月から11月下旬にかけては「白トリュフ祭」が開催され、この時期を狙って世界中から多くのグルメが訪れます。

旬は11~12月。初ものより今が狙い目!

 白トリュフが珍重されるのは、数が少ないことに加え、秋から冬のわずか3カ月ほどしか食べられないためでもあります。

 「白トリュフは1年に2度熟成期を迎えます。水分がしっかりとあれば、まず8月に。ただしこの時期の採集は、ピエモンテでは法律で禁止されています。

 理由は、夏の白トリュフは味があまり良くないうえ日持ちしないことがひとつ。もうひとつの理由は、そのまま土中で腐らせることで、秋から冬に育つ白トリュフの種菌のような役割を果たすためです。

 白トリュフは気温が下がって寒くなると香りが増し、日持ちもよくなります。これは気温が低いことで白トリュフがゆっくりと育ち、そのぶんエネルギーをたくさん蓄えるため。ピエモンテ州での白トリュフ収穫の解禁は、9月21日から1月31日までですが、実際は雪が降ればシーズン終了です」

 夏のさなかに「ピエモンテ産白トリュフ」を出す店があったら、それは白トリュフについて、あまり詳しくないお店かも知れません。「白トリュフの産地としてまだ歴史が浅い国では法規制が確立されていないため、8月に収穫したものをイタリアに送り、それを“初もの”として外国に売るというケースも見受けられます。

 日本人は“初もの”が好きですが、白トリュフは出始めの10月より、ぐっと寒くなる11月~12月のほうがおいしく、香りも豊かになります。この時期に白トリュフを出しているお店は、信用していいと思いますよ」。

米に埋めたりオイルに漬ける保存法はNG

 掘り出した白トリュフは、5日から10日くらいで芳香が薄れ、乾燥して縮んでしまいます。土中にあっても、シーズンが終われば朽ちて終わり。“長期熟成”はしません。

 「鮮度のいいトリュフは、(1)しっかりと固く、(2)香りがよく、(3)見た目より重く感じる(水分を含んでいるため)ものです。購入したら、キッチンペーパーで2~3重に包んで蓋付きの容器に入れ、冷蔵庫で保存してください。ペーパーはトリュフから蒸発する水分で湿ってくるので、毎日変えてください。

 ガラス容器は内側につく水滴でトリュフが劣化するので避けましょう。真空パックもやめてください。トリュフは呼吸しなければならないのと、トリュフ自身から出る水分によって劣化してしまうからです」。

 レストランでもよく見かけますが、トリュフを米の中に埋めるのもやめたほうがいいそう。「米がトリュフの水分を吸いすぎて乾燥(劣化)が早まり、風味も損なわれてしまいます。また、自宅でオリーブオイルなどに漬け込むと、トリュフの表面についている雑菌が繁殖して発酵してしまい危険なので、これもお勧めできません」

 日本の白トリュフは、玉石混交。信用できるレストランやショップを選ぶことが重要です。次のページでは、富松さんお墨付きのピエモンテ産白トリュフだけを提供する、ハイエンドなレストランをご紹介します。

2023.12.09(土)
取材・文=伊藤由起