「人は500歳まで生きられる」

 死ぬことを避けられないにしても、少しでも老化を防ぎたい。そのために多額の金を注ぎ込む人たちがいる。

 今、老化制御ビジネスが世界中で高い注目を集めている。

「不老不死は難しくても、寿命を100年延ばすことはできるのではないか」

 グーグル共同創業者のラリー・ペイジは、こう発言している。そして寿命を劇的に延ばすことを目標とする研究所「カリコ(Calico)」を設立し、15億ドルを投資した。カリコは老化研究にとってのブレークスルーを目指しており、コンピュータ産業の基盤となった半導体が開発された「ベル研究所」に喩えられる。

 グーグルの投資部門の責任者だったビル・マリスもこんな予測を口にする。

「人は500歳まで生きられる」

「私は死ななくてもすむようになるまで長生きしたい」

 アメリカでは老化予防ベンチャーの設立が相次いでいる。アマゾンのジェフ・ベゾス、ペイ・パルのピーター・ティールなどは老化細胞除去薬の開発を目指すバイオ医薬品会社ユニティ・バイオテクノロジー社に投資した。

 老化制御は企業が投資するだけでなく、個々人もそのために多額の金を費やしている。日本では一般人にもアンチエイジングが大流行である。老化防止を謳う化粧品や健康食品が市場に溢れ、テレビCMでも頻繁に流れている。

 はたして不老不死は実現可能なのか。

 人は何歳まで生きられるのか。そして老化は治療できるのか。

 本書はそのような疑問の答えを、最前線で研究する世界的に名高い研究者たちに聞くことを特徴としている。老化やアンチエイジングというと、とかく情報が玉石混交になりがちだが、科学的な確からしさを元に執筆した。

 では、最新の研究の現在地を追ってみよう。


「はじめに 最先端科学が解明する老化の謎」より

老化は治療できるか (文春新書 1432)

定価 990円(税込)
文藝春秋
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2023.12.13(水)