「茶菓 山川」は、コロナ禍の前から、機会を見つけて訪ねたいと思っていたお店の1軒。
京阪電車のびわ湖浜大津駅から徒歩約7、8分。お店は、3つの商店街が連なったナカマチ商店街のひとつ、菱屋町商店街のアーケードにあり、白い暖簾が目印です。アプローチにはメダカの水槽が置かれていたり、山帰来や季節の花が飾られていたり。遠方から初めて訪れても、ほっこりするなつかしい雰囲気。
店内にはイートイン席もあり、生菓子は入って左手の小さなケースに並んでいます。正面の平台には、手土産にぴったりの品々。その中で異彩を放つのが、細長い形をした、その名も「あんバトン」。
「これは、うちの粒餡を使ったあんパン。『杣(そま)』というパン屋さんとのコラボ商品です」と店主・山川誠さんの妻・由美子さん。京都府宇治市にある「杣」は、酒粕で酵母を起こして手ごねでパンを作っているのだそう。週1回だけ、数量限定の販売です。
「バターかすてら」や琥珀糖の「柚子」、美しいパステルカラーの「琵琶の真珠」など、気になる商品が同じ平台に並んでいます。愛らしい最中「鈴乃音」は、注文を受けてから餡を詰めるのだとか。日持ちするお菓子もていねいに売られています。
多彩なお菓子がありますが、まずは、生菓子をご紹介しましょう。
ケースの最下段に並んでいるのが、定番商品。
もち米「滋賀羽二重糯」で練り上げた餅でできた「餅小豆」は、もちもちではなく、ぷるんぷるん。透けて見えている小豆は近江高島産大納言。アクセントにクルミが忍ばせてあり、一度食べたら虜になります。
「本わらび」も、ぷるぷる食感。きな粉の香ばしさとなめらかなこし餡で、はかないほどの口当たり。忘れられなくなる味わいです。
「夕凪餅」は、こし餡を葛外郎でくるみ、赤紫蘇で包んでいます。梅酢を加えて塩漬けした紫蘇の塩気と酸っぱさ、餡の甘さがひとつになるおいしさに感激。
「長等山」は、パイ生地を使った焼き菓子。中は、わらび餅に包んだ粒餡。バターの香ばしい香りがコーヒーにもよく合う和菓子です。
次は、取材時にケースに並んでいた秋のお菓子。栗のオンパレードでした。
「栗おはぎ」「栗山」「栗きんとん」と愛らしい「福良雀」は、湖西の高島市マキノ町産の新栗を使った地産地消の栗餡でできています。コク深い栗の風味が口の中いっぱいに広がる、秋ならではの味わいです。
栃の実を使った「山の恵み」は、奥深い山を思わせるひなびた風味。中は上品なこし餡です。
2023.12.10(日)
文・撮影=そおだよおこ