“ポッド”で赤ちゃんを育てる世界では何が起きるか?

 卵型の“ポッド”で妊娠・出産を肩代わりさせられるようになったら、どうする? 2023年12月1日(金)公開の映画『ポッド・ジェネレーション』は、人工子宮の開発によって妊娠・出産を“外付け”できるようになった社会を舞台にした一作。妊娠すると生活は一変し、仕事やパートナーとの関係性も今までのようにはいられなくなる。ならばどうするか? 新技術が導入されたばかりで、高額ということもありまだ浸透しきっていない社会を舞台に、ポッドを利用したあるカップルが直面する一部始終を見つめていく。

 社割でポッド利用できると知ったハイテク企業社員レイチェル(エミリア・クラーク)と、テクノロジーに異を唱える植物学者のパートナー、アルビー(キウェテル・イジョフォー)の姿を通し、妊娠・出産・育児にまつわる様々な事象を鋭く描いた本作。脚本・監督・製作総指揮を務めたソフィー・バーセスに、舞台裏と作品に込めた想いを語っていただいた。

――いきなり自分の話で恐縮ですが……第二子が生まれたばかりということもあり、本作で描かれた妊娠・出産の解像度の高さに感銘を受けました。ここまで実感のこもった作品づくりには、試行錯誤があったのではないでしょうか。

 お子さんのお誕生おめでとうございます! 父親としてこの映画に共感していただき、とても嬉しいです。

 この映画の最初のアイデアは、私自身が13年前に娘を妊娠中、毎日のように奇妙な夢を見ていたことに起因します。当時つけていた夢日記を、映画の中でも実際に描きました。そうやって自分の中から出てきたものが形になったことで私自身はカタルシスといいますか、浄化作用を感じましたが、同時にアメリカで出産を経験した友人たちを見て感じたことも大いにインスピレーションを与えてくれました。それは、「アメリカの社会は出産にまで利便性を求めている」ということです。

 ニューヨークに住むカップルたちを見ていると、5年後にはオルダス・ハクスリーの小説「すばらしい新世界」のようなテクノロジーに支配された社会になるのではないか? と思いますし、親としての考え方にもますます変化が生じるのではないかと懸念しています。

――本作では、利便性を突き詰めた象徴として“ポッド(人工子宮)”が描かれます。昨今のマタニティ・ベビーグッズで人気のくすみカラーでデザインされていて、実際に商品化されていそう! と感じました。

 ポッドのデザインは、魅惑的でフェティッシュ感のあるものにしたいと思っていました。そして実は、日本の「たまごっち」をイメージしていたところもあります。私は日本が大好きで何度も訪れているのですが、デザイン性や自然の採り入れ方には影響を受けています。目の周りに花が彩られたAIのデザインなどがそうですね。日本的なデザインに北欧系のカラーを混ぜたSF的アイテムにしました。

2023.12.01(金)
文=SYO