台北駅前で見つけた「台湾便當」通り
台北を歩いていて気づくのは、日本よりもずっとテイクアウト文化が馴染んでいること。ファストフード店や食堂に入るとまず聞かれるのは、次の二つの言葉。「内用(ネイヨン)=店内で食べますか?」「外帯(ワイタイ)=持ち帰りですか?」。昼時ともなると、各店に持ち帰りのための行列ができる。
テイクアウト文化が盛んな台北の街でよく見かけたのが「便當」の文字。日本語でいう「弁当」だ。日本統治時代に広まった日本の弁当文化が「便當」として台湾に根付いた、という説明を聞くと少々複雑な気持ちになるが、実際に街で便當を利用する人たちを見ていると、日本の弁当文化とはまた違う形で発展を遂げたのがよくわかる。
日本で弁当といえば、すでに容器に詰められたおかずが店頭で売られているのが一般的。台湾でも駅やコンビニで出来上がった弁当が売られているが、それとは別に、店先に並んだおかずをその場で注文し、温かいご飯の上に載せて提供してくれる「便當」もよく売られている。しかもたいていの店では店内に席が用意されているので、ホテルに持ち帰らなくても、手頃な価格の定食として楽しむことができるのだ。
台北便當の店がずらりと並ぶのは、台北駅近く、予備校が集まる南陽街。お昼の時間帯になると、近くで働く人たちや予備校通いの学生らしい若者たちまで、安くて栄養たっぷりな便當を求めて、大勢の人でごったがえす。
基本的なスタイルは、主菜(メイン)をまず一品選び、そのあとに配菜(おかず)を数種類選んでご飯の上に載せるというもの。お店によっては、ご飯を白米と五穀米で選ぶことができたり、スープが無料でつくこともある。主菜でよく見かけるのは、油で揚げた豚肉(排骨)や、揚げたり煮込んだりした骨つきの鳥もも肉、焼いた魚など。配菜は、野菜を中心に、炒めたり煮込んだものが多い。おかずはたいてい店先にずらりと並んでいるので、メニューが読めなくても、指を差しながら気になるおかずを選べばいい。
なかには、最初から具材が決まった形で提供される店もある。便當といっても、その形は多種多様なのだ。南陽街の便當通りには、ベトナム料理風のお店から健康的なメニューを掲げた店、ビーガン・ベジタリアン用の「素食」メニューを掲げたお店など多種多様な店が何軒も並ぶ。レストランや夜市に飽きたら、ぜひ台湾便當を試してみてほしい。
2023.11.27(月)
文・写真=月永理絵