Q.小説に実験が出てきますが、おすすめの実験はありますか。
伊与原 『宙わたる教室』にも登場させている、おもしろいキッチン地球科学の実験はいろいろありますが……球体を高いところから落としてクレーターを作る実験は、たとえば砂場などでもできるし、色を付けた砂で行うと見た目もきれいなのでお勧めかもしれません。

Q.高校で教師として働いているのですが、理系か文系か進路を悩む生徒も多いです。伊与原さんは地球惑星物理学を専攻されて、地磁気の研究をされたそうですが、それらの進路はどのように決めたのですか。
伊与原 科学自体は子ともの頃から好きでしたが、科学少年というほどではありませんでした。地球の研究、とくにフィールドワークがやりたくて大学の学科は選びました。そこから先は、ほんの些細なきっかけですね。学生でも南極に行かせてもらえるという研究室があって、それはぜひとも行ってみたいとそこへ入ってみたら、地磁気を研究しているところでした(笑)。本当にやりたいことがわからないという生徒さんも多いと思いますが、えいやと決めたところに飛び込んで、まずは一生懸命勉強してみる。どんな分野でも、深く理解が進めば意外なほど視界が開けてきて、その先にいろんな選択肢が見えてくるものだと思います。

 特に最後の質問には参加者たちが深くうなずき、伊与原さんに盛大な拍手が送られ、後日、参加した高校生からはこんな感想も届きました。

「貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。元々理科は好きなのですが、どういったわけか地学だけ苦手だったのです。伊与原さんの本を読ませていただいて、むしろ地学に興味を持つようになりました。『宙わたる教室』では火星の夕焼けや断層の実験、『八月の銀の雪』ではコアに降る銀の雪や骨格標本を作る際一度埋めることなどさまざまなことを学ばせていただきました。私は理系の生物選択をとっています。将来は研究職について多岐にわたる実験、研究をしたいです。また、11月23日に三輪田学園科学クラブは学会デビューします。研究の成果をみなさんに興味を持っていただけるよう発表します。いつか学会などでお会いできるのを楽しみにさせていただきます」(三輪田学園高等学校・植木莉奈さん)

 今後も『宙わたる教室』が生み出す、感動の輪はさまざまな形で大きく広がっていきそうです。

宙わたる教室

定価 1,760円(税込)
文藝春秋
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2023.11.23(木)