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体に悪いものをひたすら食べたり(笑)

――水上さんは、作品によってまったく違う役を演じ分けています。切り替え方もお聞きしたいです。

 気持ちの切り替えでいえば、単純に台本を変えることです。台本が変わるというのは、僕にとっては、右へ行くのか、それとも左へ行くのかくらいの違いなので、違う台本が来たら、その方向に向かって進んでいくだけです。

 そもそも、役を演じるたびにその役を自分に近づけていたら、自分がわからなくなってしまうと思うんですけど、僕はどちらかというと、役の方に近づいていきたいと思っているタイプなので、あまり混乱することはないですね。

 とはいえ、疲労が溜まってつらいことはありますし、「今日もすごいセリフ覚えたのに、明日も違う作品でこんなにセリフあるのか」ということもありますけど、それぞれやることが違うことをわかっていいて、かつ、何をやるかということを自分の中で明確にしておけば、切り替えが大変で困るということはないです。

――ストイックに聞こえます。特にご自分への甘やかしやご褒美みたいなのは設けておられないのでしょうか。

 いやいや、それは、ありますよ。インスタント食品とか、体に悪いものをひたすら食べたり(笑)。

 実は今作の撮影中は、現場で出てくる弁当やお菓子、ケータリングを、一切食べなかったんです。11月に公開された『OUT』ではかなり体をつくりこんだので、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』に出るまでに減量が必要で、断食もしました。そしたら体がすごくクリーンになったので、体にいいものだけ食べようと思ったのと、戦時中の作品ということもあって、玄米だけ食べるとか、蒸かし芋だけ食べるとか、そういう単純なことをやってましたが、結構面白かったです。

――2023年は水上恒司としての活躍が大きく広がりました。今年の振り返りと来年に向けての目標や展望を教えてください。

 2023年は振り返ってみて、より1人では生きていけないなと実感した年であり、仕事量でも反響でも、いろんな意味で想像していた以上のことが起きた年だったと思います。

 同時に自分の至らない部分に対する悔しさも想像以上にあって。でもそれは、別に今年に限らず、毎年思うことなので、今年が特別ではなく、いつもその前年以上に良い年にしていくために、日々、地味にコツコツやっていくしかないなって思います。そんなに多くは求めていません、僕の中で。

水上恒司(みずかみ・こうし)

1999年5月12日生まれ、福岡県出身。主な映画出演作は『弥生、三月-君を愛した30年-』(20/監督:遊川和彦)、『望み』(20/監督:堤幸彦)、『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』(20/監督:深川栄洋)、『新解釈・三国志』(20/監督:福田雄一)、『そして、バトンは渡された』(21/監督:前田哲)、『死刑にいたる病』(22/監督:白石和彌)、『OUT』(23/監督:品川ヒロシ)など。TVドラマ出演作に「中学聖日記」(18/TBS)、「MIU404」(20/TBS)、「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(21/NTV)、NHK大河ドラマ「青天を衝け」(21)、「真夏のシンデレラ」(23/CX)、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」(23)などがある

映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』
12月8日(金)全国ロードショー

 親や学校、すべてにイライラして不満ばかりの高校生の百合(福原遥)。ある日、進路をめぐって母親の幸恵(中嶋朋子)とぶつかり家出をし、近所の防空壕跡に逃げ込むが、朝目が覚めるとそこは1945年の6月……戦時中の日本だった。偶然通りかかった彰(水上恒司)に助けられ、軍の指定食堂に連れていかれる百合。そこで女将のツル(松坂慶子)や勤労学生の千代(出口夏希)、石丸(伊藤健太郎)、板倉(嶋﨑斗亜)、寺岡(上川周作)、加藤(小野塚勇人)たちと出会い、日々を過ごす中で、彰に何度も助けられ、その誠実さや優しさにどんどん惹かれていく。だが彰は特攻隊員で、ほどなく命がけで戦地に飛ぶ運命だった。

主演:福原遥、水上恒司
出演:伊藤健太郎、嶋﨑斗亜、上川周作、小野塚勇人、出口夏希、坪倉由幸、津田寛治、天寿光希、中嶋朋子/松坂慶子
主題歌:「想望」福山雅治(アミューズ/ Polydor Records)
原作:汐見夏衛『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(スターツ出版文庫)
監督:成田洋一
脚本:山浦雅大 成田洋一
配給:松竹
https://movies.shochiku.co.jp/ano-hana-movie/

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2023.12.04(月)
取材・文=相澤洋美
写真=榎本麻美