1日の中のある時間を表現した ときを食む 果実と花の和菓子

 開発された和菓子は、朝・昼・夕・夜の四種類の「とき」を題材に、1日の中のある時間と、その時間だからこそ現れる風景や味わいを表現しています。鮮やかな色彩や瑞々しい香り、溢れ出す生命力を宿すような和菓子を堪能してみて。

◆薄明(はくめい)|マスカットの草露錦玉(そうろきんぎょく)

 「FARO」のシェフパティシエである加藤峰子さんが開発したのは、「薄明|マスカットの草露錦玉」。和菓子の伝統的な匠の技に官能的な香りと食感を融合して、次世代に続く伝統や文化を継承する革新を、洋菓子の観点から表現しています。

 こちらは日本薄荷、レモングラス、ライムの香りを漂わせ、しんと冷えた秋の澄んだ空気をイメージ。包まれたアーモンド風味の餅の中には、瑞々しいマスカットと白餡が入っています。センシュアルな食感と清々しさの中に、今日一日への高揚の兆しに満ちた逸品に。他にも「小夜中|金木犀と烏龍茶の琥珀羹(こはくかん)」も開発しています。

◆夕映(ゆうばえ)|無花果のパルフェ ジャポネ ア アンポルテ

 「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」シェフパティシエールを務める岩柳麻子さんは、和菓子に込められた時を超えて伝えられてきた尊い伝統に敬意を払い、洋菓子の技術で現代に生きる人に向けて再構築した和菓子を提案しています。

 無花果のパルフェは、秋の心地よい光がだんだんと夕暮れとなり日没を迎え、月夜と変わる時の流れをパルフェの層として表現。山椒や柚子、山葡萄に花香焙茶(はなかほうじちゃ)……。和の香りに包まれた無花果が深く美しい秋宵(しゅうしょう)を告げるここでしか出会えないパフェに仕上げました。他にも「白日|秋風の吹寄」も創作。

2023.10.27(金)
文=桐生奈奈子