独自な文化を持つ佐渡島。佐渡金銀山、北前船の寄港、そして流人。佐渡には順徳天皇をはじめとして、さまざまな高貴な流刑者が都からやってきました。そんな客人によって生じた多様な芸能。
世阿弥などが都からもたらしたと思われる能楽や歌舞伎、人形浄瑠璃といった芸能が、色濃く残っているのもこの島の魅力です。島で育ち、絶えることなく今も受け継がれている佐渡の能舞台を覗いてみました。
能の世界への入門は佐渡島から
室町時代に能の大成者、世阿弥が配流されたことでも知られていますが、佐渡に能文化が花開いたのは江戸時代初期からだといわれています。
金銀山などの地下資源に恵まれた佐渡は幕府の天領となり、初代佐渡奉行の大久保長安が各地の神社に能を奉納し、武士から庶民にも能が広まったそう。
かつては200以上あったとされる島の能舞台は、今でも30以上が現存! 佐渡では毎年4月の演能を皮切りに10月まで各地の能舞台で、幽玄の世界を楽しめます。特に6月になると毎週、どこかしらで能楽に触れられるほど能との関係が深い島なのです。
今回足を運んだのは、佐渡の宝生流の本拠地「本間家能舞台」。
明治18年に再建された本間家能舞台は、瓦葺き寄棟造りで、新潟県の有形民俗文化財に指定されています。舞台の床下には音響効果のために甕(かめ)を斜めに埋めるといった本格的な仕掛けもあり、個人所有の能舞台としては全国的にも珍しいものだそう。
本間家能舞台では、毎年7月の最終日曜に能が開催され、地元の小学生や島民、東京で活躍する能楽師も交えて、朝から夕方にかけて能が舞われます。
2023.10.22(日)
文=大嶋律子(giraffe)
撮影=鈴木七絵