あとは内釜も値段によって変わります。先ほども言った通り、以前私が使っていた象印の炊飯器は「南部鉄器」を使用していました。またタイガーの「ご泡火炊き」というハイエンドモデルは土鍋でできた内釜になっています。土鍋は蓄熱性が高く、遠赤効果もあるため、内部までしっかり熱を伝えることができます。
でも、価格が下のモデルになると「土鍋コーティング」といって土鍋の粉を吹き付けた内釜になって、蓄熱性や熱伝導性が変わってきちゃうんですよね。
さらに数千円で買えるようなものだと、IHの搭載されていない「マイコン」という機種になります。より簡単な機能しか備わっていないということですね。
――高いものになるほど「かまどで炊いたご飯」に近づけるための工夫がされているということですね。その技術に対して、自分がどこまでお金を出せるかで判断すればいいと。ちなみに、どのメーカーも目指すところは一緒だとしたら、どうやって購入するメーカーを選んだらいいのでしょうか。
購入するメーカーの選び方
田中 味に関してはどのメーカーもとてもおいしいので、どれでも間違いないと思っていますが、選ぶなら食感を比べるのがいいと思います。食感の好みって人によって結構分かれると思うんですよ。三菱電機や日立はやっぱりしゃっきりしてるかな。
――「しゃっきり」というと?
田中 かためで粒立ちが良いということです。口に入れた時に、ご飯粒ひとつひとつを感じるぐらいのしっかりした食感ですね。反対に、水を吸ってもちもちになったお米が好きな人もいますよね。少し前の象印の炊飯器で炊いたお米はすごくもちもちだったんですよ。ご飯粒がすごく大きくて甘みが強くて、それだけで満足しちゃうぐらい食べ応えがありました。
私の場合、昔はもちもちの食感が好きでした。聞けば、日本の西側はもちもち派が多く、東側はしゃっきり派が多いそうで、両親が岡山出身だったのもあるかもしれません。でも長く関東に住んでいるからか好みがちょっとずつ変わってきて、しゃっきりのおいしさがわかってくるようになりました。もちもちだと口に入れた瞬間から甘いんですけど、しゃっきりしたご飯だと噛めば噛むほど甘くなってくるんですよ。
2023.10.19(木)
文=「文春オンライン」編集部