――「美味しいご飯にこだわりたい」と考えている人が、メーカーの予想以上に多かったという事ですね。
田中 そうですね。最近はハイエンドモデルの小容量タイプも結構販売されているんですよ。ターゲットは子どもたちが独立して家を出た後の高齢層です。あとはグルメな共働き夫婦とか。昔は小容量といえば一人暮らし向けの安い価格のものが主流だったんですが、そういうニーズも高まってますね。
一人暮らし始めたての人とかはどうしても、とりあえず必要に迫られて買うので安いものを選ぶことが多いと思いますが、ライフスタイルが変わるたびに少しずつグレードアップしていくと、2人暮らしだからって安いものには戻れない……ということでしょうね。
10万円クラスの炊飯器は「何」が違うのか
――なるほど、すごく気になってきました。それでは具体的に、エントリーモデル(数千円~3万円)やミドルレンジモデル(4~7万円)の炊飯器と比べて、10万円を超えるようなハイエンドモデルの炊飯器というのは、具体的にどこが違うのでしょうか。
田中 そうですね……基本的にほとんどのメーカーさんは炊飯器で炊いたご飯をいかに「かまどで炊いたご飯」に近づけられるかを、それぞれのアプローチで目指しているんですね。高火力のかまどで炊くとお米の芯まで熱が届き、しっかりと甘みを引き出してくれる。そのアプローチの質が、価格によって変わってくるイメージでしょうか。
例えば、炊飯器の底についているIHヒーターって通常は1つしかないんですけど、象印のハイエンドモデル「炎舞炊き」はあえて小さいIHヒーターを6つ設置することで、かまど特有のムラのある炎の当たり方を再現しているんです。
ヒーターは1つずつプログラミングされていて、対角線上の2つが同時に加熱して対流を引き起こしお米を美味しくする……という仕組みになっています。価格帯が高いものになると、そういった最新の技術が施されているものが多いですね。
2023.10.19(木)
文=「文春オンライン」編集部