主人公が涙を流さないのに感動できる作品を目指した

 自身がマンガへの強いリスペクトを有するがゆえに、実写化への苦悩も尽きないという菅田さん。

「マンガの実写化でいつも困るのが『コマとコマの間をどうしようか』です。僕たちが普段マンガを読むときは、頭の中で勝手に繋げて映像化しているもの。それには当然個人差がありますが、実写化の場合はどうしても一つの答えを提示しなくてはいけないのが心苦しく思っています」

 「マンガと実写は別物」と切り捨てるのではなく、責任をもって両者のハイブリッドを目指す。その道は試行錯誤の連続だった。

「整くんは“これさえやっておけばいい”というキャラクターの強さで持っていける役ではなく、しゃべる言葉の面白さが大きい。でも原作のまま長ゼリフを話すと説法のようになってしまう。かつ感情的にしゃべるわけではないため、かなり特殊です。実写化にあたって人間味を入れつつ“らしさ”を両立したくて、田村先生ご本人を参考にしました。先生は淡々としたトーンで話しつつ時々グッとエンジンがかかるところがあって、まさに整くんなんです」

 『ミステリと言う勿れ』の盛り上がりを通し、「新たな可能性が見えた」と手ごたえを語る菅田さん。

「『ただ話すだけ』の会話劇でもエンターテインメントが成立するという証明になりました。そして僕は、主人公が一回も涙をこぼさなくても感動できる作品を作りたいと思っていました。その試みが成功して、嬉しいです」

『ミステリと言う勿れ』

美術展のため、広島にやってきた大学生・久能整(菅田将暉)。彼は犬堂我路(永山瑛太)の知り合いだという女子高生・狩集汐路(原菜乃華)に依頼され、狩集家の莫大な遺産相続を巡る争いに巻き込まれることになる。やがて、一族に受け継がれた邪悪な闇と秘密が明らかになり……。9月15日(金)より公開。

菅田将暉(すだ・まさき)

1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年に『仮面ライダーW』でデビュー。その後は映画『共喰い』『溺れるナイフ』『あゝ、荒野』『アルキメデスの大戦』『糸』『花束みたいな恋をした』など話題作に多数出演。また、ジブリ新作映画『君たちはどう生きるか』では声優を務め、待機作に『笑いのカイブツ』(24年1月5日公開予定)がある。17年に歌手としてデビューするなど幅広く活躍。

直筆サインポラを1名様にプレゼント

CREA2022年秋号をお買い上げの方に、直筆サイン付きポラをプレゼント♪ 応募〆切は2023年12月6日(水) 消印有効。詳細は誌面をチェック!

2023.09.08(金)
Text=SYO
Photographs=Norihiko Okimura
Styling=Keita Izuka
Hair & Make-Up =Azuma(M-rep by MONDO artist-group)

CREA 2023年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

永久保存版 偏愛の京都

CREA 2023年秋号

永久保存版 偏愛の京都

定価950円

『CREA』でいよいよリアルな国内旅の真打「京都」登場。グルメ、アート、カルチャーなどを偏愛目線でお届けします!