言い出しにくくなってしまったり、打ち明けてもネタとして流されてしまったり、それによって『笑われるようなことなんだ』と思ってしまったり……」(同前)
言葉が独り歩きして新たに別の意味合いを持つことは珍しいことではないが、蛙化現象という言葉の新しい用法に関してはSNS上で自身の体験談を発信するユーザーに対して批判の声が上がることもしばしば。
たとえば「デートのときに財布を出す姿を見て蛙化現象になった」といった日常的に起こりえることがきっかけで気持ちが冷めてしまったと投稿するユーザーも多く見られるので、「相手を振り回しているだけ」といった否定的な意見も生まれやすい。
一方、自身が好意を持っている人が思いを返してくれたことで嫌悪感を抱く蛙化現象の経験者は「うれしいはずなのに喜べないのは私が変なんだ」と自己否定に陥ることもあるため、他人から否定されてしまえば余計に傷ついてしまう可能性もあるだろう。
他人の指摘により気づく自身の認知のゆがみ
なお、作者の我楽谷さんは学生時代に二度ほど経験したが、その後は同様の現象に悩まされることはなくなったという。現時点では、はっきりと解決策が存在するものではないため、必ずしも経験者全員が改善するとはいいきれないが、『カエルになった王子様』の主人公ハルの場合は、親友やクラスメイトとの友情関係が解決につながる。
「認知のゆがみは人に指摘されないとなかなか気づけないですよね。自分と自分のことを好いてくれる相手だけの世界では気づきようがないです。
それで我楽谷さんは『前に進むきっかけを与えてくれる人が周りにいるのはとても素敵なこと』だということも伝えたくて、この作品を描いたと聞いています」(担当編集)
友だちに限らず、だれかの意見をきっかけに自身の認知が変わるということはおおいにありえるだろう。今作を読めば、悩んでいる方の視野も広がり、なにか克服の糸口がつかめるかもしれない。
〈「…なんか、変な感じ」「…気持ち悪い」憧れの同級生と付き合い始めた女子高生が彼氏を“気持ち悪い”と感じてしまった“ある行為”〉へ続く
2023.09.06(水)
文=浦田 みなみ