異なりを受け入れるその包容力に感動する
シチリアの州都パレルモは、イタリア第5の都市。地中海の小さな港町を想像して訪れると、その喧噪に驚かされるだろう。
一年中、世界中から観光客が押し寄せる街は、活気に溢れ、賑やか。思いのほか大きな街だが、主な見どころが集中する旧市街だけなら、徒歩でOK。
旧市街とは、18世紀までにできた城壁内側のこと。壮麗なシチリアンバロックに彩られた四辻“クアットロ・カンティ”がその中心だ。
古代フェニキア人が築いた街の基礎が地下に残るノルマン王宮からフェリーチェ門を結ぶヴィットリオ・エマヌエーレ通りと、中央駅からマッシモ劇場までのマクエダ通り、2つの直線道路がきっちり十字に交差する。
豪壮な貴族の館が並ぶ大通りから路地に入れば、まるでラビリント(迷宮)。入り組んだ路地裏に12~20世紀の建造物がランダムに出現する。
アラブ・ノルマン、バロック、ロココ……、古代フェニキア人の遺跡や古代ローマのモザイクからアール・ヌーヴォーまで、地中海の長い歴史が混在する街並みに、今の日常が生き生きと息づく。
多様な文化を融合しながら、新しい価値を生み出してきた街だからこそ、異なるものに寛容な精神が受け継がれ、旅行者も大歓迎。鷹揚な人々がのびのびと暮らす街を歩けば、煌めく太陽とそよぐ海風に心躍るだろう。
もし旧市街の迷宮で迷っても、2つの主要道路のどちらかを目指せば、簡単にクアットロ・カンティに戻れるから大丈夫。パレルモ流にのんびり行こう。
Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2023.08.16(水)
文=岩田デノーラ砂和子
撮影=志水 隆
編集=矢野詔次郎
コーディネイト=岩田デノーラ砂和子