今年で日英就航75周年を迎えるブリティッシュ エアウェイズの本社を訪問。日本便はもちろん、故エリザベス女王をはじめとする王室に関する同社の記録資料、さらにはビジネスクラスに導入された新しいシートを見学します。
航空に関する歴史資料がずらり

75年前、就航した当時の日英便は、なんと水陸両用の飛行艇で、英国南部の港町サウザンプトンから、ギリシャのアレクサンドリアやバンコクなど8ヵ所を経由して岩国(後に横浜)に到着する7日間の旅だったとのこと。
そんな当時の資料を含む、同社の貴重な資料がぎっしりと展示されているのが、ブリティッシュ エアウェイズ(以下BA)本社ビル内にある博物館「ヘリテージ・センター」です。

今回、ヘリテージ・センターを案内してくれたのは、博物館のボランティアスタッフ、ジム・デイビスさん。2002年に同社を早期退職してから、ずっと博物館の仕事に携わり、社員一同から「BAに関してジムが知らないことはない」と言われるレジェンダリーな存在です。
2019年、同社の創業100周年を記念して、エリザベス女王が博物館を訪問した際も案内役を務めたジムさん。そんな彼の口からは、王室にまつわる逸話が次々と飛び出します。

王女時代の命名式でリンゴ酒を
「女王がここにいらっしゃったとき、この写真をお見せしたのですが……」とジムさんがまず示したのは、1947年1月、当時まだ王女だったエリザベス女王が、飛行機の命名式に出席したときのもの。式典で、ピッチャーを片手に飛行機のノーズに液体を注ぐ姿をとらえています。
「エリザベス・オブ・イングランド」と命名されたこの飛行機に「『陛下が注いでおられたのは、英国産リンゴ酒だったとご存知でしたか』とおたずねしたところ、『えっ、シャンパンではなかったのですか』と。戦後間もない貧しい時代です。命名式のためにシャンパンを用意できる余裕はなかったのですね」とジムさんは話します。

2023.08.25(金)
文=安田 和代(KRess Europe)
撮影=榎本 麻美
協力=ブリティッシュ エアウェイズ、英国政府観光庁