松本と稲葉のトークはほぼ敬語
そして1988年5月、松本と稲葉が音楽スタジオでThe Beatlesの「Let It Be」「Oh! Darling」をヴォーカルとギターだけで初セッション。ここから自然とデビューに向けて進んでいく。ちなみに、7月15日に放送されたWOWOW「B'z Live History Vol.3」では、彼らが当時を振り返りつつ「Oh! Darling」をセッションするという、「B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 -GLORY DAYS-」のワンシーンが流れた。
そこで、松本が稲葉を見ながらなんとも嬉しそうに「これが伝説の始まりですよ(ニコニコ)……」的なことを照れながら言っていたのがとても印象深かった。2人の笑顔は「ニコニコ」なのである。そしてトークがほぼ敬語。ドヤ!でも、オラオラでもない。これが本当にすてきで、「(曲だけ知っている人も)ぜひライブを観てほしい」というファンの気持ちがとても分かったワンシーンだった。
古舘伊知郎の松本評「なんていい人なんだろう」
デビュー当時に話を戻そう。デモテープを聴き、すでにピンときていた松本にしてみれば自然な流れだったろうが、稲葉はデビュー前の素人である。売れたからこそ「一緒にバンドをやろうと言われてない」とのんきに回想できるのだが、当時はあれよあれよと話が進み、戸惑ったのではなかろうか。それでもしっかり信頼関係をつなげ、稲葉のヴォーカルと作詞の才能を開花させていくあたり、松本のコミュニケーション能力はすごい。
この松本の性格について、伝説の音楽番組「夜のヒットスタジオ」で司会を担当していた古舘伊知郎が、自身のYouTubeチャンネル(「古舘伊知郎チャンネル」)で、
「俺がB'zで心に残っているのは、“なんて律儀で謙虚な2人組”って思ってましたから。何一つ、わがままな振る舞いゼロ」。
そして、常に質問に答える窓口は松本孝弘だったとし、
2023.08.17(木)
文=田中 稲