私は生放送を収録したCDをもらっていたので今もよく聞き返しているんですけど、本当にいいことを言っているんです。でも、これをその場で1回聞いただけじゃわかんなかったよ~久米さんとも思って(笑)。

――自分の放送を聞き返すってどんな気分ですか。

堀井 久米さんが大切ななにかをそっと表現してくれている時の私の相槌が、だいたい「はぁ」とか「ですよね~」。もう勘弁してくれ、と思って聞いてます(笑)。ちなみにそういう時、久米さんは、私に対して言葉は一切ないですね。凡庸な返しはすべて無視です(笑)。

「お願い、もうこれ以上私に振らないでください」

――そんな深いメッセージを忍ばせてくる久米さんと毎回やりとりするのは緊張しませんでしたか。

堀井 これは特殊能力で、緊張は全然しないタイプなんです。久米さんの放送は絶対に誰にも超えられないものだったので、ただただボーッと聴いていた、というのが正しいと思います。

 で、だいたい途中から久米さんの話が読み解けなくてわからなくなってくるから、そうすると窓の向こうに見える博報堂の社屋の窓を1、2、3、4と、端から端まで数えながら、「お願い、もうこれ以上私に振らないでください」と願っていました(笑)。特等席で聞いていたのにそうやって途中で諦めてしまうことがよくあったので、本当に申し訳ないです。

――そういう時、つい自分を賢く見せたくなっちゃいそうですけど、堀井さんは自然体といいますか。

堀井 いや、無理があるんですよ。ちょっと賢い人は頑張れば賢く見せられるかもしれませんけど、全然賢くない人が頑張ってもどうやっても無理なので(笑)。だから逆に、自分がこういう人なので、人のことは何でも許せますね。全然カチンとこない。何でしょうね。他人と争う気がないんでしょうね(笑)。

撮影=佐藤亘/文藝春秋

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2023.08.08(火)
文=小泉なつみ