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地獄温泉ミュージアムを作った理由とは?

 温泉街にこうした施設を作った理由について、地獄温泉ミュージアムを運営するDots and L代表の千壽智明さんはこう話します。

「温泉を地獄と称することは観光地としての愛称ということではなく、1000年以上前から別府で根付いている表現です。大昔の人たちは地面から湧き出す熱泉や噴気を温泉と捉えられず、地獄のような景色だと恐れていたのです。それが年月を経て、先人達の試行錯誤の中で自然の素敵な恵みとして温泉が愛され、別府の中心的な観光資源となりました。

 この歴史的背景を象徴する言葉が“地獄”ですし、別府のユニークな文化である地獄温泉の価値をぜひ多くのみなさまに共感してほしいなと思い、ミュージアム企画を進めていきました」

謎解きゲームのように温泉の秘密が解き明かされる

 館内はシーンと呼ばれる4つの空間に分かれ、温泉や地獄温泉についてさまざまな角度や異なる体験から学べるようになっているため、飽きることがありません。

 例えば、シーン2では、カーテンのような透けた布で仕切られた迷路のような空間を自由に進んでいくと、「火山ガスが混ざり強酸性となった熱水は、酸の作用によってナトリウムやカリウムなどのミネラルを岩石から溶かし出し、中性になります」といった解説が、謎解きゲームのように現れ、ワクワクしながら雨水が温泉になっていく仕組みを理解できます。

2023.07.24(月)
文・撮影=石川博也