チロル州の州都でもあるインスブルックは、雄大なアルプスの山々に囲まれた気持ちのいい街。市街からバスやロープウェイ、リフトなどを使って気軽に近隣の山々へ出かけられることから、夏はハイキング、冬はウィンタースポーツのメッカとなっています。また、自然とともに生きてきたチロルの人々の独特な文化や風習を色濃く残しているのも魅力のひとつ。今回はチロルムード満点のインスブルックの街をご案内します。

チロルの文化を感じるインスブルックの街歩き

イン川のほとりにはカラフルで愛らしい家々が並びます。まるで絵本の世界です

 オーストリア旅の最終目的地、インスブルック。これまで1964年と76年に冬季オリンピックが開催されているので、名前を聞いたことがある人も多いでしょう。ウィーンからは特急列車で約4時間30分。オーストリアの西にあって、国境のあるイタリア、スイス、ドイツへは電車を使えば2時間ほどで着いてしまいます。市街に出てまず度胆を抜かれるのは、街に覆いかぶさるようにしてある山々。晴れた日には2000mを越える雄大なアルプスの山並みを背景に見ることができます。

 街は新市街と旧市街に分かれていますが、歩いて楽しいのは、歩行者専用の路地がある旧市街。石畳が敷かれた路地には中世の面影を残すレトロな建物がひしめき、チロリアンテープやチロリアンハットなど、素朴で愛らしいチロルの雑貨を売るお店などが点在しています。

ジャガイモとベーコンを炒めたチロルの郷土料理。人数分の目玉焼きをトッピングしてくれました

 インスブルックに来たら必ず食べてほしいのが、チロルの郷土料理。アルプス渓谷の麓で暮らしてきたチロルの人々の料理には、厳しい自然環境を生き抜くための知恵や工夫が詰まっています。なかでもベーコンや燻製などを使った料理は格別! チーズやジャガイモ、キノコなど、山の恵みがふんだんに使われたメニューはどれも素朴でシンプルですが、ほっと心あたたまる味です。ウィーンやザルツブルクのレストランではコース料理が多くて疲れたなあ……なんて思っていたのですが、チロル料理は大皿からみんなで取って食べる気楽なスタイル。同じ国でもまったく違った文化を経験できるなんて、まったくもってオーストリアは奥深い国です。

チロルの民族衣装に身を包んだ子供たちのクリスマスパレード。本物の馬も登場して、びっくり!

 ウィーンやザルツブルクと同様、インスブルックでももちろんクリスマスマーケットが開かれます。とくに旧市街の象徴でもある「黄金の小屋根」前広場のマーケットは800年以上もの歴史をもつトラディショナルなもの。近隣のイタリア、ドイツ、スイスからわざわざ足を運ぶ人も多いそうです。マーケットのスタンドにもチロル関係のお店が多く、手編みの手袋や帽子などかわいい雑貨がたくさん! 明るい時間帯にはバンド演奏や人形劇、マジックショーなどの大道芸も行われていて、大都市とは違った、ほのぼのとしたクリスマスの時間を過ごすことができます。スタンドの人も街ゆく人も、心なしか和やかな感じがするのは私だけでしょうか? いいえ、このアットホームな感じこそが、インスブルックの一番の魅力なのです。

黄金の小屋根前のクリスマスマーケット
URL http://www.christkindlmarkt.cc/
開催期間 12月23日(月)まで
開場時間 11:00~21:00

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2013.12.22(日)
小林百合子=取材・文
田部井朋見=写真