生豆の焙煎からはじめ、手作業で行うのが「おもてなし」

 専用の木箱の上に客人の数だけ並んだコーヒーカップ、専用のフライパンやポット。コーヒーセレモニーは、生豆を煎ることから始まります。じっくり焙煎していくと、芳しい香りが漂います。

 焙煎したコーヒー豆は、臼とめん棒のようなもので豆を砕きながらすりつぶします。

 私も体験させてもらったのですが、無心でコーヒー豆をすりつぶしているとさらにいい香りが広がり、豆をつぶす音や感触に癒されます。一般的にはミルなどで挽くコーヒーですが「手でやることでムラができて、その分味わい深いコーヒーになるんです」とのこと。

 この日振る舞われたのはアラビカ種のコーヒー豆で、酸味が強いのが特徴。お茶請けの「コロ」と呼ばれる穀物やナッツを炒って塩味をつけたエチオピアのお菓子との相性もぴったりです。

 現地では3杯飲むのが基本で、好みに応じて、塩や砂糖、バターを入れて、またはそのままで味わうそうです。2~3時間かけて、会話をしながらゆっくりと楽しむのがエチオピア流。

 ホストが焙煎からコーヒーを淹れる作業を手作業で、ゆっくり丁寧に行うコーヒーセレモニー。途中でお香が焚かれるのもセレモニーの一環。客人を喜ばせたいという「おもてなし」の精神を感じます。

2023.06.24(土)
文=根津香菜子
撮影=末永裕樹