中国では『ほしのこえ』のDVDは正規でリリースされていなかったけど、海賊盤といったあらゆる手段を講じて見てくれているマニアの方がたくさんいたんですね。僕のもとにそういった方たちから感想がいっぱい寄せられたこともあって、2000年代の頭から中国にファンの方たちがいるのはわかってはいたんです。
最初はそうした実感だったんですけど、作品を出すごとに中国の経済規模も大きくなって、流通も完全にクリーンになって、日本のアニメが興行として成立していっていることも感じましたね。
ーーそれまでにもあったファンからの熱気が、『君の名は。』以降から商業的な熱気に変わったわけではなく。
新海 ビジネスのやり方が変わってきただけで、熱量は当時からそのまま変わっていないと思います。海外のファンのみなさんの熱さはずっと継続していて、その中でも中国は特に熱いんですね。『言の葉の庭』(2013年)のときに上海の映画祭に呼んでもらって、はじめて中国に行ったんです。『言の葉の庭』は日本では小規模公開だったんですけど、上海ではとても巨大な劇場で上映してくれて、ファンの方が1,000人近く集まって「サインがほしい」「あの作品が好きだ」と言ってくれました。
あの時点で、僕の作品のパッケージは中国で発売されてないし、作品も公開されていないにも関わらず、そうした歓迎を受けたことがとても印象深くて。今回の『すずめ』でも、その熱量はまったく変わっていなかったですね。
「どの作品も違う彼氏と見ました」というファンも
ーー韓国でも『すずめの戸締まり』は累計観客数が約540万人、韓国での日本映画歴代1位の大ヒットとなっています。韓国での支持も中国に近しい感じですか。
新海 僕がはじめて韓国を訪れたのは『雲のむこう、約束の場所』(2004年)を作ったときで、ソウル国際マンガ・アニメーション映画祭に呼んでいただいたんです。やはり、その時点でもファンの方がいらっしゃって、インターネットなどを通じて僕の作品に触れていたようでした。
2023.06.09(金)
文=平田裕介