開発陣が語った「かけ算の遊び」という言葉の真意
また、これに物の時間を戻すモドレコを組み合わせるとさらにすごいことになる。モドレコは対象を早戻しするように動かすもので、たとえば川上から流れてきた木の板に使うと、川をさかのぼるようにして動くのである。
モドレコは最初こそ戸惑うかもしれないが、非常に便利なツールだ。敵が投げてきた岩に使えば敵のほうへ戻っていくので、ピンチのときの反撃手段にすらなりうる。
本作では空の島から岩が落ちてくるのだが、これにモドレコを使えば上空に飛ぶことができる。あるいはウルトラハンドで物に任意の動きをさせてからモドレコで早戻しなども可能。これを利用すると、早戻しで動いている箱に乗って地面の亀裂を回避するなんて芸当も可能となる。
そして、スクラビルドはバトルで特に活躍する。これは敵が落とした素材などを武器や盾につけられるというもので、さまざまな効果を自分で作り出せる。
相手を混乱させるキノコを矢につけて敵を同士討ちさせたり、長い棒に槍をつけてさらに長い武器を作ったり、あるいは棍棒に巨大な岩をつけて破壊力抜群の武器を作ったり、もしくは槍に肉をつけて炎で焼いたりと、いろいろな可能性が広がっている。
スクラビルドのおかげで、新しい素材を手に入れるたびにバトルの可能性が広がっていく。「この素材をあの武器につけたらどうなるんだろう?」と試すとさまざまなリアクションが用意されているため、冒険すればするほどどんどん楽しくなっていくのだ。
物を動かしてくっつけるウルトラハンドも、物の時間を巻き戻すモドレコも、武器と素材をくっつけるスクラビルドも、すべて「かけ算の遊び」である。
そこにあるものを組み合わせると新たな可能性が生まれるし、さらに冒険を進めると新しい素材が手に入り、またかけ算の要領でできることがどんどん増えていく。それぞれのツールの使い方を習熟していくと、さらに新しい何かがプレイヤーにひらめくわけだ。
いわば、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、広大な砂場にたくさんのおもちゃと課題を用意したかのようなゲームである。前作からツールと素材がかなり進化しているおかげで、プレイヤーが見つける可能性はますます増え、遊べば遊ぶほど新しい何かが発見されるゲームになっているのである。
2023.05.28(日)
文=渡邉 卓也