「口唇口蓋裂」を公表した理由
――どうしてそこまで思い詰めたのか――。その理由が本書では明らかにされています。ほしのさんは、上唇と口の中の天井部分が裂けた状態で生まれる先天性の「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」という病気を抱え、幾度となく手術をし、喋る際にも発音がままならなかったと。
ほしの いつか自叙伝を書けるようなことがあったら、書きたいと思っていたことでした。「口唇口蓋裂」という病気をいろんな方に知ってほしいという思いもあって。ただ、人に笑ってもらうお笑い芸人という職業なので、病気のことを公言したら、お笑いがやりづらくなるんじゃないかという不安もずっとありました。
書くならもっと有名になってからの方がいいのかなとかいろいろ迷ったのですが、書籍のお話をいただける機会なんてそうそうない。だったら、このチャンスをいかして書かせていただいたこうと思ったんですよね。
――本を読むと「口唇口蓋裂」がどのような病気なのか、とてもわかります。
ほしの 人から笑われたり、発音といいますか、会話もうまくできなかったりします。僕は、ミュージシャンにあこがれを抱いていたのですが、自分の容姿やうまく歌えないことを理由にあきらめました。
でも、小学生のときに出会った『笑う犬の冒険』を見て、お笑いに救われたんですよね。それを機に、芸人になりたいという思いが芽生えていきましたね。
お笑いに目覚めたコント
――原田泰造さんと堀内健さんが演じる「テリー&ドリー」のコントが、特に響いたと書かれています。
ほしの 「生きてるって何だろ」「生きるってな~に」って掛け合いをするんですけど、笑えちゃったんですね。「生きる」という言葉にさえ触れたくないくらい生きるのが嫌だったのに。もしも笑いに変えられたら、生きることへの悩みがとてつもない前フリになるかもしれない……そう考えると「面白いって楽しい」って思えました。
でも、僕の容姿や性格を客観視したとき、「芸人になりたい」と言ってもバカにされるだけということも分かっていました。
2023.05.26(金)
文=我妻 弘崇