もちろん「人間性が優れている」ということもできますが、「人間性」は一般的すぎて若干使いにくい言葉です。「社会性がある」「協調性がある」は、上の人から下に向かって評価する時には便利な言葉遣いですが、下から上に向かっては言いにくいものです。

「情報処理能力が高い」「コミュニケーション力が高い」は、いずれでも使用が可能で、今の時代にフィットしたほめ言葉ですね。時代に合った人間という自信に繋がる言葉です。

 私の同僚には、学生の答案の採点が速く確実な人がいて、その仕事っぷりは毎年見るたびに「倍速だね!」とほめてしまいます。

 表舞台に立たず裏方に回りがちな事務方に、速くて正確な人が多いと感じますが、そういう相手には「よくこの短時間で作業をできましたね」「スピード感に驚きました」「段取り力がありますね」と声をかけると人間関係がスムースになりますし、あなたのお願い事を気持ちよく聞いてくれるようになるかもしれません。「仕事のテキパキ感すごいですね」などという擬態語を取り入れた表現も、伝わりやすいでしょう。

 

「段取り力があるね」は、子ども相手にも使える言葉で、勉強の準備がいい子に使うといい影響が出るものです。

予測力があるね

 予測する力も大事な能力の一つです。

 よく、公共トイレに「きれいに使っていただきありがとうございます」という貼り紙がありますが、あれは使う前に目に入るものです。今現在の使用の仕方にお礼を言っているだけではなく、「これからもきれいに使ってくださいね」という未来に向けたメッセージでもあります。ほめがこれからの在り方へのメッセージとなっています。

 先行きを見通すのがうまい人には、予測力、見通し力を評価するのが効果的です。

「先が見えているね」「先取りできているね」と言うのもよいでしょう。

 堅実な人に対しては、「しっかりしている」を言い換え、「フォローがいいですね」「ミスが少ないですね」「確かめがよくできているね」と守備力をほめるとよいでしょう。

2023.05.13(土)
文=齋藤 孝