「最初はいわゆる『勝ち組女性』の意見かと疑っていましたが、目にするたびに真剣さが伝わってきました」という応援メッセージを見て、「勝ち組女性」とはどういうイメージなのだろう、そして勝ち組とカテゴライズされた女性の意見はどうして疑われるのだろう、と考えさせられました。仮に発言しているのが男性の医師であったならば、「勝ち組男性」という言葉が出てきたでしょうか? 専門家としての意見が学歴の高さゆえに疑われることがあったでしょうか?

 また、誹謗中傷で「死産報告書」を送られた件について、涙を交えて話すと、「女の涙は演技、泣き落としと言った悪しき偏見が向けられてしまうのが現実ですし、他者の目をもう少し気にして脇の甘さをなくしていただきたい」という声も寄せられました。胎児が死ぬと脅された妊婦が泣くという自然な感情さえも「これだから女は」と批判の対象になること、また一見味方と思われる人からの牽制的な声には二重の辛さがありました。

「マイクロアグレッション」とは、「政治的文化的に疎外された集団に対して日常の中で行われる何気ない言動に現れる偏見や差別に基づく見下しや侮辱、否定的な態度のこと」と定義されますが、日本社会の中で「女性」が未だにマイノリティであること、無意識のバイアスから生まれる小さな攻撃は日常の中のあらゆる場面に潜んでいることにも気付かされました。

科学、ソーシャルジャスティス、人間に惹かれた生い立ち

 私は現在ハーバード大学医学部アソシエイトプロフェッサー、またマサチューセッツ総合病院の小児うつ病センター長という立場で、小児精神科医として子どもの精神疾患を診察する臨床、人間の感情や判断に関わる脳機能を解明する脳科学研究、そして医学生や研修医の医学教育に携わっています。研修医時代を過ごしたイェール大学で出会った愛するチェリストの夫と共に息子を3人育てており、子どものメンタルヘルスは単に職業にとどまらず、まさに自身に直接関わるテーマとして情熱を持って取り組んでいます。

2023.05.19(金)