あとは、来客にお茶を出したり、いらなくなったVHSの廃棄に行ったり、新聞の片づけをしていました。アナウンサーが雑用をすることは、入社前から分かっていましたが、アナウンサーとしての仕事がほとんどない。あるとしても全然華やかでもなく、主な仕事が雑用と電話取りというのが、ネガティブ思考に拍車をかけていたかもしれません。
――当時のフジテレビのアナウンサーは、とても華やかでしたよね。
高橋 当時は本当に華やかで、人気番組の「チノパン」を千野志麻さんがやられていて。その上に内田恭子さんがいらして、千野さんの下には高島彩さん、中野美奈子さんがいらして…とにかくキラキラだったので、それはもう圧倒されましたね。まぁ、周りのキラキラに関係なく、自分がイケてなかったと思うんですけれど…(笑)。
――後輩にも多くの人気アナウンサーがいました。
高橋 私の1期下に平井理央ちゃん、その下に本田朋子ちゃん。さらにその下に生野陽子ちゃん、加藤綾子ちゃんがきて。ちょうど挟まれていましたね。
高橋英樹にアドバイスを求めると…?
――先輩や後輩の活躍を見て、どういう気持ちでしたか?
高橋 みんなすごいなって。それはそうだよな、アナウンスメント能力はもちろん、超可愛いもんなって(笑)。
――嫉妬したり、苦しくなることはありましたか?
高橋 人を見て嫉妬するということはなかったですね。誰かにネガティブな感情を抱くこともなかったですし。あくまで自分の中だけです。どうして私には仕事が来ないんだろう。どうして私は自分が思っているような仕事ができないんだろう。どうして私はこんなに叩かれるんだろうって、自分の中での出来事でしたね。
ただ、今考えれば、私のビジュアルだけじゃなくて、私が醸し出している雰囲気だったり、叩かれて負のオーラを背負っていたり、萎縮したり、自分のやりたいことができていない悶々としたものとかが、多分雰囲気として出ていたと思うんですね。やっぱり制作側からしたら、そんな子使いたくないじゃないですか。もっと元気でハツラツとして、明るくパワフルな子を使いたいと思うから、あの時は純粋に負のスパイラルにいたんだなと思います。
2023.05.10(水)
文=松永 怜
撮影=釜谷洋史/文藝春秋