『東京卍リベンジャーズ』は、なぜこれほどのメガヒットになったのだろうか。
ヤンキーを知らない世代にウケた
最初に作品の概要を説明しておきたい。本作の主人公・花垣武道(タケミチ)は、壁の薄いボロアパートに住み、バイト先では6歳年下の店長からバカ扱いされるフリーターで、「極めつけはドーテー」。26歳にして、みずからの人生を「どこで間違えたんだ?」と嘆いていたところ、2017年7月4日、中学時代に付き合っていた人生唯一の恋人・橘日向(ヒナタ)が、悪党連合「東京卍會」に殺害されたことをニュースで知る。
その日、タケミチは何者かによって新宿駅ホーム下へと突き落とされ、人身事故で人生が終わった……かに思えたが、気がつくと12年前の2005年にタイムリープしているのであった。中学生に戻ったタケミチはヒナタを救うために、そして未来を変えるために、まだ結成から2年しか経っていない「東京卍會」に接触し、頂点を目指すことになる。
このように本作は、ヤンキーを題材にしたマンガである。
現実の社会においては、かつて80年代から90年代にかけて一世を風靡したヤンキー文化は、本作が連載を開始した2017年の時点でほとんど途絶している。不良少年の様態はツッパリ、ヤンキー、チーマーなど時代によって変化してきたが、本作における不良少年たちは典型的なヤンキーに属する。リーゼントヘアや特攻服などのディテールへのこだわりは、さながら「ヤンキー博覧会」だ。
第124話「When it rains, it pours」(第14巻収録)でタケミチが『湘南純愛組!』(藤沢とおる)と『疾風伝説 特攻の拓』(原作:佐木飛朗斗、作画:所十三)といった「少年マガジン」でかつて連載されていたヤンキーマンガを「漫画(バイブル)」と称している点を抜き出しても、本作にヤンキーへのこだわりが強く感じられる。だが、族(チーム)で集会を開いたり、バイクで集団暴走行為を働いたり、対立チームと数百人規模での喧嘩を繰り広げたりするのは、さすがに時代錯誤といえるだろう。かつてのヤンキー文化全盛時を知る40代以上の世代からすれば、「なぜいまヤンキー?」との疑念を強くするかもしれない。
2023.05.09(火)
文=加山竜司