有栖川 いやいや、今日は呉さんの「咲くやこの花賞」受賞記念のイベントなので、主役は呉さんです。呉さん、あらためておめでとうございます。実は「咲くやこの花賞」は私もいただいておりまして、受賞したのが作家デビューから六年目、呉さんもデビューして六年目という奇縁があります。違っているのは、呉さんはこれまでたくさん賞をもらっていること。「呉先生」ですよ。

呉 やめてください!(笑) さあ、さっそく本題に入りましょう。有栖川さんはずっと本格ミステリーと呼ばれる作品を書いてらっしゃいますよね。

有栖川 最近は怪談も書いていますが、基本的には謎解き小説ですね。

呉 僕は一応、ミステリーをベースにしているんですけど、いろんなジャンルにまたがっていて、自分でも統一感がないなと思います。飽きっぽい性格だからかなと思うんですが。

有栖川 飽きっぽいからというよりは、呉さんはいろんな人に会いたいんじゃない? 自分が書く小説のキャラクターって、書きながら出会っていく感じがあるじゃないですか。執筆中は、その人物とじっくりつきあって対話する。それが小説を書く喜びになっているんじゃないですか。

呉 なんていい言い方!

有栖川 いい言い方しかしないから(笑)。

呉 有栖川さんはシリーズものをお書きになっていますから、いわば同じ人とつきあい続けているわけですが、そのモチベーションはどこから来るんでしょうか。

有栖川 私の場合は「反復」がすごく好きみたいです。同じことを繰り返すことが。この人が探偵役です。事件が次々に起きて、探偵役が解決しました。次の事件に遭遇して、今度はこんな推理で解決しました――反復しているわけですよね。探偵役が事件を解決するたびに成長して、最終的な目的に近づいていくという設定にはしていないので、ただ反復しているだけ。私はね、この「ただ反復しているだけ」に快感を覚えるタイプ。

呉 だからシリーズものなんですね。作家アリスシリーズ(むらひでシリーズ)は何年になりますか。

2023.05.05(金)