そうそう、電動ママチャリをどれにしようかって悩んでた時にふと、「芸人の皆は今頃めちゃくちゃ頑張ってネタを考えてるのに、自分は自転車の機種に悩んでる。こんなに差がついたらもう絶対に追いつけない」と感じて、自転車屋さんで涙が溢れてきたこともあります。

 あと、キャパシティオーバーで耳が聞こえなくなったこともありました。

――え、そんなことがあったんですか。

 

虻川 保育園に入れるまで子どもの預け先を確保するのが本当に大変で、かといって仕事も諦めたくなくてロケを無理して入れていた時期があったんです。でもロケって長引きがちだし、そうなった時に予定の組み換えというか、子どもを誰に引き取ってもらってどこで預かってもらうかみたいな段取りを考えるのが苦手で、苦痛だったんです。

 そんな時、駅前で預け先のやりとりを携帯でしていたら一緒にいた子どもが泣き出しちゃって、その途端、「耳が痛い!」となって聞こえなくなっちゃって。

育児にスポーツ根性は通用しない

――ストレスが症状として出てしまったと。

虻川 早くに病院にかかったので数ヶ月で元に戻ったんですけど、自分の不安が息子にも伝わっていたのか、当時は子どももよく泣いていました。親子ともにつらい時期でしたね。

 私、学生時代にソフトボールをずっとやってたんですけど、腿に手をぶつけて投げるから、腿がアザで真っ青になるんです。でも、続けるうちに痛みがなくなっていって、上達していく。それと同じ感じで、つらいことを我慢して乗り越えたら完母(完全母乳)ができると思ってたんですよね。けど結局、母乳が出なくて挫折しました。

――育児にスポーツ根性は通用しなかったと……。

虻川 仕事も根性で乗り切れたし、体力にも自信があったから余計に自分を過信していたところがあったと思います。あとは、マニュアルにがんじがらめになっていました。育児本にならって授乳のときはテレビやスマホを一切見ず、片乳何分としっかり時間をはかりながら、修行僧のように授乳してましたからね。

2023.04.11(火)
文=小泉なつみ