平野 語学の勉強と、歌のレッスンが目的でした。

――もともと英語の勉強はしていたのですか?

平野 やっていました。アニメのイベントで海外に呼ばれることもあるし、ミュージカルで海外のクリエイティブチームとやり取りする際にも必要になります。その際には通訳がつきますけど、ちょっとしたニュアンスとか、直接やり取りできると違いますから。それから留学直前にはいわゆる「駅前留学」に通ったり、元々数年前からイギリス英語の教室にも通っていたので、日本での準備は万端のつもりでした。

 でも、いざニューヨークに行ってみると、最初はまったく会話ができませんでした。相手の話すスピードは速いし、なによりニューヨークには人種が多すぎて、それぞれルーツの違う訛りを持っているから、慣れるまで本当にたいへんでした。耳は割と早く慣れたんですけど、しゃべるのはなかなかテンポについていけなかったです。

――語学学校ではどんなことがありましたか?

 

平野 語学学校には日本人の留学生がいたので、最初は隠れていたんですけどバレてしまい、他の国の生徒や先生にも「あっ、デンデだ!」と……(笑)。

――『ドラゴンボール』シリーズに出てくる、平野さんが演じたキャラクターですね。

平野 高校生の頃は親友もいて楽しい日々でしたが、芸能活動をしている制約があって学生生活が充実していたわけではなかったので、友達ができたことはすごくうれしかったですし、色々と助けられました。ちょうど大統領選挙があった年(ドナルド・トランプが勝利)なので、語学学校でのディベートが本当に白熱していたのもよく覚えています。授業中にケンカになるなんて、やっぱり文化が違うなぁって。

――友人も出来て、学校でも新鮮な毎日があって……と、すごく良い時間を過ごされたように思います。生活には意外とスムーズになじめたんですか?

平野 それが……、トラブル続きだったので、強制的に慣れるしかなかったんです。最初は学校の寮に住んでいたんですけど、プライベートな空間がないことで「もう無理」となって出ることになり、そこで不動産詐欺に遭いました。留学生だからって、すごく足もとを見られたんです。

2023.04.08(土)
文=加山竜司