●「舞いあがれ!」から“ぬいしゃべ”と、サークルの先輩役が続く

――22年には犬童一心監督の『ハウ』に出演されただけでなく、和田胤長役で大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも出演されました。

 自主映画ばかりやっていたこともあり、初めての商業作品は普通に緊張しました。大きい作品と小さい作品、それを作る目的はそれぞれだとは思いますが、自分の関わり方や、心境としては何も変わっていません。ただ、『佐々木』以降、自分を観てもらえる機会が増えてきたことは、めちゃくちゃ嬉しいです。

――そして、NHK朝ドラ「舞いあがれ!」では、浪速大学の人力飛行機サークル部員・玉本淳を演じられました。ご自身の反応や周囲の反響について教えてください。

 最初マネージャーさんから連絡をもらったときは、「え、僕が朝ドラ!?」と思いました。現場では部長役の足立英くんの盛り上げ方が上手くて、「大学のサークルって、こんな感じなのかな?」と。カメラが回ってないときもわちゃわちゃした雰囲気がありました。放送されてから、分かりやすく、身内から連絡が来るようになりましたが、普段は大きな出来事もなく、変わらずですね。

――最新出演映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』では、大学のぬいぐるみサークルの副部長・鱈山を演じられています。

 「なにわバードマン」とは正反対とは言わないまでも、全然わちゃわちゃしていない現場で、言葉で言い表せない優しさに包まれた空間でした。目の前にぬいぐるみがたくさんあるからなのか、金子由里奈監督が持っている雰囲気のせいなのか、めちゃくちゃ居心地が良かったです。

●無意識的にその人の生きざまが出る役者になりたい

――繊細ながら、クセのある鱈山の役作りも大変だったかと思います。

 今まで、ぬいぐるみと喋ったことがなかったので、毎日語りかけるようにしましたが、これがなかなか難しいんです。ぬいサーの中だと、(麦戸役の)駒井(蓮)さんは特にぬいぐるみと話すのが上手かったです。また、鱈山は世の中で起こる出来事を自分事のように捉えてしまう人間なので、撮影時期に始まったロシアとウクライナの戦争だけでなく、社会情勢に対して、とても敏感になっていました。

――細川さん自身にとって、どんな作品になったと思われますか?

 俳優としては、今まで通り必死に作品と向き合いました。これまでの自分にとっても、どこか特別な大事にしたい一本になりました。学校や会社、社会における日々の生活で感じるものだけではない「生きづらさ」を感じている人に観てほしいですし、「それ」をあまり感じない人がいるとしたら、そういう人にこそ観てもらって知ってほしいと思います。

――将来の希望や展望、また憧れの人がいれば教えてください。

 良い役者になりたいです。絶対的にその人でないと成立しない役者だったり、無意識的にその人の生きてきた時間が出ちゃってる役者。憧れの人はいませんが、強いて挙げるとするなら、『ザ・マスター』のホアキン・フェニックス。あの芝居を観て、体中の毛穴が開くんじゃないかと思うくらい興奮したんです。

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細川 岳(ほそかわ・がく)

1992年8月26日生まれ。大阪府生まれ。2014年、『ガンバレとかうるせぇ』で俳優デビュー。20年、企画・脚本としても参加した『佐々木、イン、マイマイン』では佐々木役を演じ、圧倒的な存在感を放つ。その後、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」や朝ドラ「舞いあがれ!」に出演。

映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』

京都のとある大学の「ぬいぐるみサークル」に入部した、“男らしさ”“女らしさ”のノリが苦手な大学生・七森(細田佳央太)や彼と心を通わす同級生の麦戸(駒井 蓮)。また、サークル副部長・鱈山(細川 岳)ら、日々の生きづらさを感じている人々の姿が描かれていく。

4月7日(金)より京都シネマ、京都みなみ会館にて先行公開
4月14日(金)より新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイントほかロードショー
©映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」
https://nuishabe-movie.com/

Column

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文=くれい 響
写真=佐藤 亘
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