ものづくりを始めて100年以上。そんな日本の老舗メーカーがつくる日用品や道具たち。長い年月のストーリーが込められた一品を、日々の暮らしを大切にするあの人に贈りたい。

 全国各地のものづくりの生産者を訪ね歩き、生活雑貨・日用品の問屋業を個人で営む日野明子さんにおすすめのアイテムを聞きました。


縁起物でもある、ブロンズの干支をお守りに

【since 1860】おおてら「ミニ干支」

 箱を開けた瞬間、思わず「かわいい」とつぶやいてしまいそうなブロンズ製の干支シリーズ。小さいものは高さ1.2センチメートルと、まずはその小ささに目を奪われる。

 製造・販売しているのは富山県高岡市の大寺幸八郎商店。高岡といえば古くから美術銅器の産地として知られていて、大寺幸八郎商店も万延元(1860)年の創業以来、銅器の製造を行なってきた。現在6代目。

 ここ数年で人気を集めている干支シリーズは、富山市内でセレクトショップを営みながら創作活動を行っている林悠介氏によるデザイン。コラボ商品として2007年に生まれ、今では大寺幸八郎商店の看板商品となっている。

 ロウで原型をつくるロストワックスという鋳造方法で、なめらかで美しいフォルム、精巧なつくりを実現。銅像や仏具など、現代生活とはなじみにくくなっていた高岡銅器に、干支シリーズは新たな風を吹き込んだ。箱入りの十二支セットのほか、単体でも購入可能だ。カラーも3色あって選ぶ楽しみも。

 店舗は江戸時代の風情を残す高岡市金屋町に。カフェ&ギャラリーでは金継ぎや錫のアクセサリーづくりなどのワークショップも体験できる。

「ゴツいものが多い高岡銅器の中では異色のアイテム。びっくりするほどの小ささで、とてもかわいい。お守り代わりに持ち歩きもしやすいです」(日野さん)

大寺幸八郎商店

所在地 富山県高岡市金屋町6-9
電話番号 0766-25-1911
営業時間 10:00~17:00
定休日 火曜(祝日の場合は営業)
https://ootera.com/

自然と出番が多くなる実用的な漆トレー

【since 1700's~】輪島キリモト「山道四方皿」

 石川県輪島で200年以上「木と漆」に関わるものづくりに携わる。大正までは輪島漆器の製造・販売を行い、昭和のはじめには木工所へ転業。

 7代目の桐本泰一氏は大学でプロダクトデザインを専攻し、帰郷後は漆器のデザイン、器、家具の製作、建築内装なども行っている。

 「山道四方皿」は傷つきにくいタモ材を使用。木地に直接漆をすり込んで拭き取り、乾かす工程を繰り返す「拭漆」が、木目の美しさを引き立てている。実用性に優れ、日々の出番も多くなりそうだ。

「7代目が自らデザインしたトレー。スタッキングでき、直接食べ物をのせることもできますし、小さなお盆としても活躍。色は写真の黒とベンガラの2色。使うほど良さがわかり、贈る人のセンスの良さを痛感するアイテム」(日野さん)

輪島キリモト

所在地 石川県輪島市杉平町大百苅70-5
電話番号 0768-22-0842
営業時間 9:00~17:30(要予約)
定休日 土・日曜、祝日
http://kirimoto.net/

ちょこっと温め、そのまま食卓へ

【since 1918】松山陶工場「あたため鍋」

 松山陶工場は創業100年を超える伊賀焼の窯。創業以来、家族経営でメーカーの請け仕事を行ってきた。

 それだけ信頼のおけるつくり手だが、やはりオリジナル商品がなくては存続は厳しい。そこで、三重県の工業研究所窯業研究室の協力で生まれたのが初のオリジナル「あたため鍋」だ。

 伊賀の耐熱土のみを使用した、片口のコロンと丸い片手鍋。食卓で目をなごませてくれるかわいさで、ひとり分のスープや味噌汁、ホットワインやチャイの温め、チーズフォンデュなど、使い道を考えるだけでも楽しくなる。

「1~2人分のミルクティーやスープを温めるのにぴったり」(日野さん)

D&DEPARTMENT MIE by VISION

所在地 三重県多気郡多気町ヴィソン672-1 サンセバスチャン通り6
電話番号 0598-67-8570
営業時間 10:00~18:00
定休日 無休
https://www.d-department.com/

2023.02.23(木)
Text=Yoko Maenaka(BEAM)
Photographs=Suguru Ariga

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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