「抽象性の高い怪物描写も良かった」(高橋ヨシキ)

「『ジョーズ』『AKIRA』『エヴァンゲリオン』などへのオマージュも愛らしい」(澤井健)

 これらの評、見てない人は「?」だろうが、見た人は全部うなずけるのだ。さらに、

「6回観ました。(中略)映像のすごさを体感したかった」(曽我部恵一)

「IMAXの表現力が炸裂した怪作」(内山昂輝)

 映像そのものが強い魅力を放つ作品でもあるのだ。

 

3位:『コーダ あいのうた』――「考えさせられる映画」で「泣ける映画」ながら、「攻めた下ネタ」が共存

 CODA、すなわち「聴覚障害者の両親をもつ子ども」を主人公に、好きな歌を学ぶため家を出たい気持ちと、家族を助けるために家に残らなければいけない義務感の間の葛藤を描く。

「『聴者の言葉って人の温かさを失ってないかな?』と深く考えさせられた一本です」(プチ鹿島)

「クライマックス。ろう者の家族だけがその声を聴くことができない。健聴者とろう者ではこの場面の見方は違うのではないだろうか?」(中江有里)

 問題を投げかける一方、

「ハンデを持った俳優の演技の素晴らしさ。層が厚いよ。ろうあの下ネタギャグは刺激的だった」(ウエストランド・井口)

 とも評されるように、かなりエッジの効いた下ネタを主人公の両親が炸裂させる。その振り幅に、今作の豊かさを感じるのである。

 

2位:『リコリス・ピザ』――この2人を見ている、それこそが特別な映画的体験と気づく

「映画ってここまでキラキラした躍動感に満ちた魔法みたいなものだったのかという一本」(中原昌也)

「全てが良かった」(内山昂輝)と、人生のある時期の多幸感と輝きが結晶になったような今作にヤラレた人が続出。

「なんでPTAはこの映画撮りたかったん?という思いと、この映画作ってくれてマジありがとう、という思いが同居するとても不思議な魅力にあふれる一本だった」(ヒコロヒー)

 というコメントがあるように、「自分のための一本」に感じた人が多かったのかも。実際、1位に選んだ人は『マーヴェリック』より多かった。

2023.01.07(土)
文=「週刊文春CINEMA!」編集部