統一教会の問題と日本会議
上野 カルビーの元代表取締役の松本晃さんがおっしゃったことですが、日本の大企業の売上高経常利益率はほぼ横並びの3パーセントで、お互いに顔を見合わせて満足していると。ところが国際標準の利益率は15パーセントで、比較にならないわけですよ。ですから現状維持ではジリ貧になるばかり、いよいよ「変わらなければと思ったときには手遅れですよ」と言っているのですが、この脅しは効くでしょうか(笑)。
浜田 本当に危機感を感じた企業しか変わってないと思っています。本の中で事例を書いたキリンにしても資生堂にしても富士通にしても、今本気で変えようとしている経営者は、一度海外に出て、多様性のある組織でマイノリティとして働いた経験を持っている方々で、世界の変化に敏感だと思います。
上野 まったく同感です。日本企業は「外圧と黒船ショック」でしか変わらない。団塊世代の島耕作的なノリの男性たちは、それより下の世代から忌み嫌われました。この人たちが職場から消えたら何もかも変わるだろうと思われましたが、団塊世代がすっかり去った後も職場文化は変わらなかった。今も40代ぐらいの男性中間管理職が「おっさん粘土層」として再生産され、彼らの存在が女性たちの昇進を阻んでいます。その弊害をいろんなところで感じます。
浜田 粘土層上司が新任管理職を推薦するシステムの中では同質性の高い、似たような人たちが上がっていくに決まっているので、この昇進システムを変えないと駄目ですね。彼らが維持したいもう一つの心地よさに、家庭内で家事育児をしなくていいという性別役割分業が今もまだあります。好きで働いてるんだろうとか、俺の稼ぎで食えるのにとか、夫から言われている女性は40代でも多いんですよ。
浜田 この本を書いているときに、安倍元総理の殺害事件がありました。そこから統一教会の問題などが明らかになるにつれ、いろんな点と点が結びついてくる感じがあったんです。結局、表で女性活躍推進法案を作りながら、裏では選択的夫婦別姓や同性婚に反対する宗教団体と手を握っていたわけで、根っこはその裏側にあったわけですよね。
上野 さらに日本会議もあります。宗教色がないからお目こぼしにあずかっているけれど、第一次・第二次安倍内閣では閣僚のうち日本会議関係者が半分から3分の2くらい占めていました。日本会議の草の根のネットワークは地方議会を含めてすごいです。だから選択的夫婦別姓についても、合理性だけで動いているわけではないという問題の根深さがあります。
浜田 企業も政治も合理性で動かない。合理的に考えれば、これだけ財政が厳しい中で、配偶者控除とか第3号被保険者制度といった現状制度を変えたら、税収が伸びるに決まっているのに変えようとしない。
2022.12.19(月)
文=鳥嶋夏歩
撮影=釜谷洋史