一方で原作では細かく描写される城戸と美涼(清野菜名)の関係性は、映画ではそこはかとなく匂わせる程度にとどまっている。

石川「美涼は編集段階でかなりシーンを落としたんですよ。ただ、城戸との関係性については、清野さんが丁寧に演じてくださったおかげで、ちゃんとある感情が伝わってくるようになっていると思います」

平野「そうですね。映画ならではの巧いバランスでまとめてくださいましたけれど、バーのカウンターにいる清野さんがあまりに魅力的だったので、個人的にはもうちょっと見たかったな、と(笑)」

 

「実際に完成した映画を観ると、あのラストシーンがずっと気になり続けているんですよ」

 映画のラストシーンは、原作小説の構成を巧みに入れ替え、独特の後味を残す。

平野「脚本を読んだ段階では、小説とはちがう構成に違和感もありましたが、実際に完成した映画を観ると、あのラストシーンがずっと気になり続けているんですよ。それでなるほど、と。気になるということは、観る側にとってはずっと尾を引くというか、それによって他の場面についても、どういうことだったのかな、と考えさせるような効果がある。それは映画にとって非常によいことだと思うんです」

 平野氏の小説世界が石川監督によってどのような映画表現に生まれ変わったのか、観て確認してほしい。

杉山秀樹=写真

2022.12.04(日)
文=佐野 亨