――通販や投稿サイトも充実して作品を発表する場所は増えましたが、よしながさんにとってはあの空間あってこその同人活動なんですね。

よしなが よくサークルのスタッフさん達と「子供の頃のお店屋さんごっこみたいで楽しいよね」と話しています。終わったあとに「今日はこんな人が来てくれたね」とか「もっとああすればよかったね」と打ち上げで話すのも楽しい。20年以上の付き合いだけどイベントのときしか会わないから何の仕事をしているのかも知らない不思議な間柄です。「いま何にハマってるの?」みたいなオタ話だけで時間がいっぱいになっちゃうので。コミケがなくなると会えなくなってしまうから、それはイヤですね。

――実際にサークル参加すると、夏は暑く冬は寒くて過酷です。

よしなが それは本当にそうですね。こんなに文明が発達したはずの世の中で、温かいところに避難することもできず、ずーっと寒風に吹かれて寒さに震えているなんて「なんなんだ!」って毎回思います。床のコンクリートが寒いから段ボールを貼り付けるとか、そういう知恵ばかり身につきます。周りもだんだん年齢を重ねてきて、健康上の理由で辞める、という人も増えてきましたからね。私も今は参加していない友達から「よくやってるよね……」と言われたときには、自分でも「確かにな……」と思いました(笑)。

――それでもよしながさんとしては、あくまで現場にこだわっていきたい?

よしなが いや、そこまで強い気持ちでもないんですけど。ただ、スタッフや友達と話していて「今年どうします?」っていう話になると「じゃあ新刊出すかぁ……」って(笑)。少なくとも今年は出ます。

2022.11.30(水)
文=加山 竜司