ここで言う「道」とは、塀に囲まれた東京・赤坂御用地で偶然見つけた古い街道の跡のことです。この道の先には一体何があるのだろう。閉ざされた世界で育つことを強いられた幼い日の陛下は、想像の世界で塀の外へと飛び立ったのではないでしょうか。やがてその「道」は、「山」へと続く登山道となりました。陛下の初登山はわずか5歳のときで、場所は長野・軽井沢の離山です。標高1200メートルほどの頂上に、上皇さまと共に立たれました。これが陛下の人生を貫く柱の一つ、登山の始まりでした。

 

「予定のない山小屋にもズカズカ入ってください」

――「道」と決めたら、「道」から「山」へと派生していく。本当にブレない、動じない方であるように思います。「知らない世界」というと、イギリス・オックスフォード大学ご留学にもそういう印象がありますね。老舗のパブなどへ足を運び、“普通の生活”を送られた経験に今も支えられているのではないかと。

大木 これも写真家の白簱さんが話してくれたことですが、若い頃の陛下がある山へ登るとき、「予定のない山小屋にもズカズカ入ってください」と陛下に耳打ちしたらしいんです。白簱さんの友人や知り合いがいる山小屋には事前にひとこと連絡しておいて。すると陛下は、その通りためらわずに山小屋へ入っていった。警察やお付きの職員たちは予期せぬ事態に大慌てなのですが、陛下は自然な感じで人が集まっている山小屋の中で、皆さんに囲まれたことを非常に喜ばれたそうです。

陛下はお茶目でダジャレがお好き

――陛下はそういう自然な触れ合いを期待されているのですかね。皇太子時代の地方公務などでは、よく「サプライズ」があって、予定のないところで5分だけ、皇太子ご夫妻を一目見ようと集まった人たちへお声がけをする……という場面に何度か遭遇したことがあります。

大木 その通りだと思います。まさに「たまたまそこにいた人」ですから。特に山小屋のような場所では飾らずに、さまざまな話ができたのではないでしょうか。陛下は非常にお茶目でダジャレがお好きで、冗談を言って周囲を笑わせることも多いそうですよ。愛子さまも記者会見でその一端が明らかになりましたが、とてもお茶目な女の子だといいます。

2022.11.24(木)
文=大木 賢一,佐藤 あさ子