2021年に日本上陸を果たした、フランス発のボタニカルコスメブランド「On The Wild Side」。

 特筆すべきは、“自生している野生植物を原料としている”こと。加えて、合成成分や保存料は一切使用せず、100%自然由来にこだわっているブランドです。

 創業者であるアン=ソフィ・ナーディは、ロレアルグループやロクシタンといった大手コスメブランド出身というバックグラウンドを持ちますが、なぜ成長企業の第一線から外れ、新たにコスメブランドを立ち上げたのか。

 久しぶりに来日したという彼女に話を聞きました。

「植物を使ったコスメ」とだけでは言い表せない

――ブランドを立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか?

 「Impliquons-nous」(Actes Sud刊、2015年)に掲載された、哲学者エドガール・モランと、アーティストのミケランジェロ・ピストレットの対話を読んだのがきっかけでした。

 彼らは、今世紀のあらゆる問題に積極的に関与することを促していて、人類はそれぞれの道や方向性を見つけて生きていくタイミングが来たのだと感じました。自分の行動や言動に責任を持たなければならないと強く思ったんです。

 そして私にできることは何か、と考えたとき、自分のベースでもあった“美容”という分野でアクションすることでした。そんなときに出会ったのが、野生植物でした。

――栽培された植物ではなくて、自生する野生植物を原料として選んだのはなぜですか?

 人の手によって栽培された植物は、ある意味コントロールされている、とも言えると思う。フランスでは、今でも薬草を用いた民間療法が根付いていて、うち、60%は野生のハーブを使うというのが通例です。その理由はやはり野生の植物のほうが、パワーがあると考えているからです。

――野生植物と栽培植物ではパワーが“全く違う”ということでしょうか。

 はい。自然界だと、まず土壌に注目してみましょう。長年かけて培われたベースがあって、環境や気温の変化があったり、虫や動物たちもそばにいたりしますよね。

 花粉が運ばれるタイミングだって人の手で計画的に行われているわけではないので、受粉が少しずれるだけでも、植物に含まれる成分というのは変化しうるのです。

 人の手でケアされ続けた植物と比べると環境があまりにも違いすぎます。だからこそ、根本の強さが違う。なので、私たちのスキンケアアイテムは、「落とす」、「潤す」のたった2~3ステップでも、エイジングケアが叶うくらいの力があると思っています。


――だとすると同じクオリティのものを作り続けるのは難しいのではないでしょうか。

 そこはご心配なく! 自然界は常に厳しい環境下だというのは重々承知しているので、ストックがあります。

 また、野生植物を摘んでくれる方々がいるのですが、その方たちのコミュニティーから分けてもらったりすることもあります。関わっているすべての人々が、自然の恵みに感謝しながら、無駄のないように、そして自信を持って製品を生み出しています。

2022.11.17(木)
文=CREA編集部
撮影=釜谷洋史