この記事の連載

新しい技術や文明を受け入れる

 1000年以上も前から続く千日回峰行を満行した者の発言としては、違和感を持って受け取られるかもしれませんが、時代がもたらす変化を怖れることはありません。新しい技術や文明は、表現の種類を増やすだけで、私たち人間の本質を歪めるわけではないからです。

 回峰行でもっとも長い距離を巡拝する「京都大廻り」について、私はかつて「ゲーム感覚」と表現したことがありました。毎日、早朝からお加持(祈祷)を待っていてくださる信徒さんを見つけたとき、「お加持のかた、発見!」と、心中で喜びの声を上げていたことをお話ししたのです。

 お加持のかたを見出すのに「ゲーム感覚」とは何事かと眉をひそめたかたもいらっしゃったでしょう。この感覚は、小学生時代にファミコンが登場した1970年代以降に育った方々でないと、なかなか実感するのも難しいかもしれません。

 けれど、私も47歳になりました。日本人の平均寿命は男性で81歳、女性で87歳ですから、皆さまの2人に1人は、私と同じような「ゲーム世代」でもあるわけです。

 もちろん、千日回峰行の目的は巡拝であり、皆さまにお加持をして差し上げることですが、その慎みと喜びの表現が、時代によって少しずつ変わっていくことを否定するのはもったいないと思うのです。

 流行に乗るのではありません。注意深く観察して、使えそうな部分を見抜くのです。それが、新しい道具を見つけて楽しむためのコツです。

 掃除でいえば、クイックルハンディ(花王)の使い勝手のよさは衝撃でした。照明のカサや天井近くの桟の日常的な掃除は、これだけで十分なほどです。伸び縮みタイプなら、先端のブラシの角度も変えられますので、背伸びしても届かない場所もこれ1本ですべて対応できます。

 水垢取りには、メラミンスポンジの激落ちくん(レック)でしょう。洗面所や台所、風呂場など水道の蛇口がある場所には、小さくカットした激落ちくんを石鹸と並べて置いています。水垢が目に留まったとき、その場その場で磨いてしまえば、蛇口は常にぴかぴかです。このメラミンスポンジは、金属製のドアや表札のくすみを取るのにも使えます。

 掃除機は、昔ながらのコード式と最新のコードレスを併用しています。さっと持ち運べるコードレスは、コンセントを気にせずに使えるのが利点ですが、お寺のように床面積が広く、複数のお堂がある場所では充電が持ちません。絨毯などを敷いた大広間では、やはりコード式が便利ですね。

光永圓道(みつなが・えんどう)

1975年、東京都に生まれる。
1990年、比叡山にて得度受戒。
1997年、花園大学仏教学科卒業。
2000年、延暦寺一山・大乗院住職。
2008年、明王堂輪番拝命。
2009年、千日回峰行満行。北嶺大行満大阿闍梨。
2015年、十二年籠山行満行。
現在、大乗院住職、覚性律庵住職。

比叡山大阿闍梨 心を掃除する

定価 1760円(税込)
小学館
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

← この連載をはじめから読む

2022.11.25(金)
文=光永圓道